M&A関連費用にかかる税務処理(後半)
※2023年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、M&A(買収)における
関連費用・付随費用の税務処理を取り上げますが、
今回は株式譲渡(譲受)に絞って解説します。
株式譲渡によってM&A(買収)をした場合、
法人税法施行令第119条(有価証券の取得価額)より
「購入手数料その他購入のために要した費用」については
取得価額に含まれることを先週のメルマガで解説しました。
以上のことから、買い手側の【原則的】な税務処理は、
支出内容によって下記のようになります。
●仲介会社に対する着手金(基本合意契約締結前)
=損金算入
●DD費用などFA(専門家)への報酬
・案件が成約した場合:取得価額に含める
・案件が成約しなかった場合:損金算入
●仲介会社に対する仲介手数料(成功報酬)
=取得価額に含める
M&Aを検討した結果として、株式譲渡(譲受)に
至らなかった場合、取得した株式がないわけですから、
支出した費用が全額損金になることが明確である一方、
結果として株式譲渡(譲受)に至った場合であっても、
・M&Aすることを意思決定するため(前)の調査費用
なのか、
・M&Aすることを意思決定した後の調査費用
なのかが論点になるケースもあります。後者を
付随費用=取得価額に含めるのは当然のこととしても、
前者を「購入手数料その他購入のために要した費用」と
いえるかどうか非常に曖昧だからです。特に、
複数のM&A事案を検討しているようなケースです。
この点、平成22年2月8日裁決(非公開/
争点番号:300705010)においては、取締役会で
その株式を取得することを決議した後で依頼した
財務調査費についてはその株式の取得価額に含めるべき、
と判断しています。
上記裁決事例では、事実認定の根拠として
・臨時取締役会において本件株式を取得する旨を決議
・外部事務所との財務調査の業務委託契約書において、
その調査の目的が本件株式の買収についての意思決定の
参考とするためであるとされていること(特定の有価証券を
購入する意図の下で当該有価証券の購入に関連して
支出される費用に該当すること)
の2つが挙げられています。
M&A(買収)する相手方が決まっておらず、
複数の候補から買収先を選定するための調査費用で
あれば損金算入できる可能性があるものの、
買収先が決まった後において、最終判断をするため、
もしくは買収価額を算定するための調査費用については
取得価額に含めなければならないということになります。
同じような論点として争った裁決事例として、
平成22年2月3日裁決(非公開/福岡)も
ありますので、併せて参考にしてください
(上記両裁決ともに国税不服審判所の
裁決要旨検索システムで見ることができます)。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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