更正の請求:提出期限(所得税還付申告編)
※2022年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、
「更正の請求」を体系的に解説していきますが、
今回から3回に分けて更正の請求の【期限】(時効)
について解説していきます。
なお、今回は個人の確定申告時期ということもあり、
所得税(還付申告)の更正の請求を取り上げます。
この点は、非常にわかりにくいので注意が必要です。
まず大原則ですが、更正の請求の期限は
「法定申告期限から5年」となっています
(国税通則法第23条第1項)。
この「5年」にかかる例外については
来週以降に説明しますが、特に所得税の還付申告で
理解しづらいのは「法定申告期限」です。
例えば、給与年調済み・不動産所得赤字の還付申告は
「申告期限なし・5年間」と理解されているでしょう。
ですから、平成28年分の還付申告(当初申告)は
令和3年12月31日までしかできません
(国税通則法第74条第1項)。
この申告期限の正しい理解は「申告義務がない」
ことから「申告期限なし・5年間」となるわけです。
同じような例で、給与年調済み・医療費控除の還付
(申告義務なし)は5年間いつでも申告が可能です。
では、この平成28年分の還付申告を
平成29年4月9日に提出していた場合、
更正の請求はいつまでできるでしょうか?
このケースでは法定申告期限がありませんので、
令和4年3月15日とはならず、申告書を
提出した日から5年(以内)となりますので、
令和4年4月9日まで更正の請求が可能です。
(所得税基本通達122-1)。
繰り返しますが、上記のケースはあくまでも
「申告義務がない還付申告」(所得税法第122条)
だから「法定申告期限なし・5年間」となり、
更正の請求は申告日から5年以内となるわけです。
一方、申告義務がある(所得税法第120条)還付申告
については、法定申告期限が翌年3月15日ですから、
更正の請求の期限は5年後の3月15日となります。
例えば、給与収入2,000万円超・2ヵ所以上給与・
その他所得20万円超・同族会社からの賃貸料あり
などで申告義務があり、平成28年分の還付申告を
平成29年4月9日に提出していた場合、これは
期限後申告なのであって、更正の請求の期限は
令和4年3月15日と申告日では変わりません。
あくまでも、納付すべき税額の有無で
申告義務の有無を判定しないことに留意ください。
また、細かい論点になりますが、
給与年調済み・その他所得20万円以下、
年金400万円以下で源泉徴収されている場合など、
本来は申告義務がない者の申告(所得税法第121条)
は、申告義務がない還付申告と同じ取扱いになり
(所得税基本通達121-1)、更正の請求の期限は
申告日から5年以内となります。
全体をまとめると下記になります。
●申告義務が【ある】申告に対する更正の請求
=法定申告期限である翌年3月15日から5年
●申告義務が【ない】申告に対する更正の請求
=法定申告期限がない
=申告日より5年
来週水曜の本メルマガでは、更正の請求の期間が
5年にならない「例外」について解説します。
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