• HOME
  •  › ブログ
  •  › 創業者社長の役員退職給与の税務上の限度額(その2)
2018.02.20

創業者社長の役員退職給与の税務上の限度額(その2)

※2017年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「創業者社長の役員退職給与の税務上の限度額(その2)」

ですが、東京地裁(平成25年3月22日判決)を取り上げます。

この事例は役員退職給与の適正額が問題になった事例ですが、

論点の1つに「法人の借入金の連帯保証人であったことは

どう評価されるのか?」というものがあります。

この点に関し、納税者は下記と主張しました。

〇亡乙は、少なくとも原告の設立(注:平成4年)当初より

平成17年に死亡退職するまでの13年間、〜遅くとも平成5年ころからは

原告の取引金融機関との間で原告を債務者とする一切の債務につき

個人で包括的に連帯保証するなど、社会通念上ごく一般的に行われる

程度を超え、原告に対する貢献を果たしてきたものである。

〇亡乙は、上記業務や巨額の個人保証等による過度の負担により、

うつ病に罹患し、その治療中に自殺したものであって、その精神的不調

及び死亡と原告における業務等との間に因果関係があることは明らかである。

〇このような亡乙の原告に対する貢献度その他の特殊事情を考慮すれば、

その退職慰労金には相当程度の功労加算が認められるべきであるところ、

退職慰労金の加算制度を採用している会社における加算金支給率は、

基本慰労金の30パーセント以内としている会社が最も多いことからすれば、

本件役員退職給与適正額を算定するに当たってもこれを基礎とすべきである。

しかし、東京地裁は納税者の主張と認めず、下記と判断しました。

〇金融機関が法人に対して融資を行うに当たっては、その是非は別として、

代表取締役等の役員を保証人とすることを条件とすることが広く一般的に

行われている。

〇殊に、原告のような同族会社においては、代表取締役や

その親族である取締役等の役員を保証人とすることも珍しくないことは

公知の事実である。

〇しかも、証拠〜によれば、原告の借入金債務の弁済が滞り、

亡乙が保証債務を履行するに至ったことはないと認められることを

併せ考えれば、亡乙が金融機関との間で、原告の借入金債務について、

包括的に連帯保証する旨の契約を締結していたことをもって、

同業類似法人の抽出が合理的に行われてもなお、同業類似法人の

役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとは

いい難いほどの極めて特殊な事情があるとは認められない。

〇乙が、原告における各種事務や巨額の個人保証等による過度の負担により、

うつ病に罹患し、その治療中に自殺したものであると主張する点について

みるに、〜亡乙が自殺するに至った直接的な要因は不明であると

いわざるを得ない。

〇亡乙がうつ病等に罹患し、自殺するに至った要因が、原告における

各種事務や巨額の個人保証等による過度の負担であったとまで認めるに

足りる証拠はないといわざるを得ない。

〇同業類似法人の抽出が合理的に行われてもなお、同業類似法人の

役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとは

いい難いほどの極めて特殊な事情があるとは認められない。

中小企業の社長と話をしていると、

「先生、この〇億円の借金があったから会社はやってこれたし、

その保証人だったのは俺だよ」という話になることがあります。

つまり、保証人であることは功労金加算の対象であると言いたい訳です。

これは「感情的」には理解します。

しかし、これは「中小企業においては一般的なこと」であり、

功労金加算の対象とはならないのが「税務の考え方」です。

ここはしっかりと覚えておいて頂ければと思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。