• HOME
  •  › ブログ
  •  › 書面添付における税理士のリスク
2021.08.19

書面添付における税理士のリスク

※2019年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

書面添付をすることで、実地調査に入られる確率は
確実に下がることがわかっているものの、
書面添付することによる税理士本人の
リスクを考えると、書面添付することに
躊躇するという税理士も多いようです。

一方で、その「リスク」に着目はしながらも、
具体的にどのようなリスク(罰則)があるのか
理解していない税理士も多いですから、
本稿では、書面添付をする税理士のリスク
について具体的に解説しましょう。

まず税理士法にある、書面添付をした場合の
懲戒規定から確認してみましょう。

税理士法第46条(一般の懲戒)
財務大臣は、前条の規定に該当する場合を除くほか、
税理士が、第三十三条の二第一項若しくは
第二項の規定により添付する書面に虚偽の記載を
したとき、又はこの法律若しくは国税若しくは
地方税に関する法令の規定に違反したときは、
第四十四条に規定する懲戒処分をすることができる。

ここでは「虚偽の記載」が何なのかが
論点になるわけですが、この点は
通達に解釈が規定されています。

税理士法基本通達46-1(添付書面の虚偽記載)
法第46条に規定する「第33条の2第1項若しくは
第2項の規定により添付する書面に虚偽の記載を
したとき」とは、当該書面に記載された内容の全部
又は一部が事実と異なっており、かつ、当該書面を
作成した税理士がそのことをあらかじめ知っていた
と認められる場合をいうものとする。

以上から、税理士として【事実を知りながら】
事実とは違う記載をする=虚偽の記載
とされており、裏を返すと事実と相違する記載を
してしまったとしても「事実を知らなかった」
「顧問先から聞かされていない」のであれば
税理士が虚偽記載したことにはなりません。

もちろん、税理士が「確認していない事項」は
書面添付に記載する必要はありませんし、
記載していない以上は、虚偽記載に
該当しようもない、ということになります。

また、国税庁サイトでは「税理士法違反行為Q&A」
が公開されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/ihan/menu.htm

この問3-8では、「「法第33条の2第1項若しくは
第2項の規定により添付する書面に虚偽の記載」が
あったとして行われる法第46条の規定による
懲戒処分は、どのような内容ですか。」として、
書面添付における税理士の懲戒基準を挙げています。

https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/ihan/qa03.htm#a3-8

(事例8) 税理士甲は、関与先である法人Aの
法人税の確定申告に当たり、支払手数料に関する
契約や支払事実が無いことを法人Aの代表者乙から
知らされて認識していたにもかかわらず、
乙からの要請を受けて架空の支払手数料を
計上することにより、所得金額を不正に圧縮した
真正の事実に反する申告書を作成した。
また、甲は、上記の申告書の作成に当たり、
法第33条の2第1項の規定により添付する書面に
「支払手数料について、その支払先とされた法人
との契約内容等を検証し、金額の妥当性について
審査した」旨の事実と異なる虚偽の記載をした。

以上のように、書面添付における税理士のリスクは
かなり限定的だと理解できますが、一方で
一般的に税理士は、書面添付におけるリスクを
漠然として捉えていることから、書面添付の判断を
迷いがちだと思います。

上記のように、懲戒リスクを具体的に認識・理解した
うえで、書面添付をする・しないを
顧問先ごとに判断すべきでしょう。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。