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2025.05.14

重加算税を体系的に理解する(導入編)

※2024年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

6月中旬を過ぎ、春の税務調査が終わったはずですが・・・
税理士さんに会うたびに「7月以降、税務調査の件数が
すごい増えるらしいですね!?」とよく聞かれます。

私から言わせてもらうと、調査件数が増えるのではなく、
コロナ前の(例年の)水準に戻るだけ、という認識です。

「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」
(令和5年11月 国税庁)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

では、令和4年7月~令和5年6月に実施された
法人調査の事績が公開されていますが、全国での
調査件数は「62千件」となっており、コロナ前の
調査件数は約100千件/年であったことから、
まだまだ調査件数が増える余地があるということです。

さて、どんな税目であれ税務調査が増えると、
論点として重要度を増すのが「重加算税」となりますので、
今回から複数回にわたって、重加算税に関して
体系的に解説していきたいと思います。

まず、重加算税に関する「現実」を認識すべきですが、
上記国税庁の資料では、法人に対する税務調査における
不正発見割合=重加算税賦課率が毎年公表されており、
過去6年分をまとめると下記のようになっています。

令和4事務年度:20.7%
令和3事務年度:22.7%
令和2事務年度:26.5%
令和元事務年度:21.6%
平成30事務年度:21.1%
平成29事務年度:21.0%

個人事業主(所得税)に関する重加算税の賦課率は
公表されていませんが、相続税調査に関する
重加算税賦課率の直近は下記のようになっています。

令和4事務年度:14.8%
令和3事務年度:15.5%
参照「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」
(令和5年12月 国税庁)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf

このように、(おそらく)税理士・会計事務所の体感と
重加算税賦課率に乖離がある(実際の率が高すぎる)
理由として、税務調査において調査官がいとも簡単に
(ある意味根拠もなく)「これは重加算税ですね」と
指摘する一方で、調査に立会う税理士・会計事務所が
適正に・論理的に反論できない現実があるのでしょう。

調査官の立場からいえば、とりあえず「重加算税です」
と指摘しておいて、反論されなければ重加算税を賦課、
論理的に反論されて窮すれば「重加算税じゃないですね」
と指摘を取り下げればいい、という関係性ですから、
税理士・会計事務所(納税者)側が常に不利となります。

調査官がとりあえず「重加算税です」という論理は単純で、
調査官自身の評価として重加算税賦課率が最重要だからです。

私がよく使う例えとして、調査官の評価(昇給昇進)は
「増差所得の額=ヒット(額は大きい方がいい)」である一方、
「重加算税の賦課=ホームラン」とされるからです
(国税は税務調査の意義を不正発見としています)。

実際に経験したことがある税理士も多いと思いますが、
調査官からすると「過少申告加算税の増差所得300万円」
よりも「重加算税となる増差所得100万円」
となるように調査を仕向けたいわけです。

実際のところ、ある地方の国税局(の調査官)は、
「東京や大阪に増差で勝てるわけがないのだから、
重加算税賦課率だけは勝とう」と大真面目に語るくらいです。

税務調査において重加算税の指摘を受けた場合、
いかに主張・反論するかについては、次回以降の
本メルマガで詳しく解説していくわけですが・・・

認識として間違ってならないのは、調査官が
重加算税と指摘する行為が「隠蔽または仮装」など
重加算税の賦課要件を本当に満たす場合だけではなく、
上記のとおり「とりあえず指摘しているだけ」
「反論に対して反論できなければ重加算税の指摘を
取り下げればいいだけ」という軽い動機であることも
多いということであって、だからこそ重加算税の指摘に
対してその場で軽々に受け入れないことが大事なのです。

来週水曜の本メルマガでは、いつ時点の
修正申告であれば重加算税が課されない
(=更正の予知に該当しない)のかを解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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