領収書無・クレカ明細で仕入税額控除が否認される論理
※2024年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
本メルマガでは以前から、
・クレジットカード払いで領収書を受領/保存していない
・クレジットカード会社からの請求明細で経費計上している
場合において、税務調査で仕入税額控除の否認指摘を受けると
反論できない(否認される)ことを注意喚起してきました。
インボイス制度施行以後の税務調査においては、
特に上記の否認指摘が増えたので、さらに注意が必要です
(調査官もインボイス制度開始で消費税に細かくなってます)。
今回のメルマガでは、領収書が無い・クレカ明細では
仕入税額控除が認められない論理を整理して解説します。
まず、下記の国税庁・質疑応答事例をご覧ください
(わかりにくいので、後ほど解説を加えます)。
「クレジットカード会社からの請求明細書」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/05.htm
クレカ会社が発行する請求明細が仕入税額控除の要件である
「請求書等」に該当しない理由は【対価を支払った相手方】から
交付を受けた領収書ではないからです。
飲食店(クレカ加盟店)であれば、飲食というサービスを受け、
その対価を支払った飲食店から領収書をもらうことで
仕入税額控除の要件を満たすのであってクレカ会社(信販会社)は
あくまでも決済代行先(債権譲渡先)なので、クレカ会社への
支払およびその明細は仕入税額控除の要件を満たしません。
論点は別になりますが、下記質疑応答事例(消費税)の図を
見ていただくと理解しやすいと思います。
「クレジット手数料」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/06/02.htm
さて、ここで話がややこしくなるのは、「論理として」
クレカ払いを受けた店側には領収書発行義務がないことです。
なぜなら、クレカ払いした瞬間に金銭を受領していないからです
(もちろん現実を考えると、クレカ払いをして
領収書を発行しない店は無いと思いますが・・・)。
そこで、クレカ払いをした時に発行される「利用伝票」
(表記は「クレジット売上票」となっていることが多い)を
保存しておくことで仕入税額控除の要件を満たすとするのが
上記質疑応答事例「クレジットカード会社からの請求明細書」
での解説になるわけです。
以上の論点をまとめると、下記となります。
●店側からもらった領収書がないと仕入税額控除は認められない
(クレカ明細は仕入税額控除の要件を満たさない)
●ただし、領収書ではなくクレカ利用伝票でも問題はない
なお、上記の論理を理解できると、クレカ払いの領収書を
発行しても、印紙を貼付する必要がない理由がわかります。
「クレジット販売の場合の領収書」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/37.htm
税理士・会計事務所の中には、顧問先に対して
領収書の受領・保存を指導せず、クレカ明細での計上を
容認している・記帳代行している実例も多くあり、
税務調査で仕入税額控除を否認されて顧問先からの
信用を失うケースがありますので、ぜひ注意してください。
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