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2023.06.30

【名義財産の重加算税】税理士に伝えなかった事実がある裁決事例

※2022年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回は先週水曜から引続き、相続税調査における名義財産
の重加算税について取り上げます。前回は相続人が調査を
受けるにあたって「外部からもうかがい得る特段の行動」
がなかった場合でしたが、今回は相続税申告にあたって
相続人が税理士に名義財産を伝えなかったケースです。

相続税申告で税理士がいる場合、相続人(納税者)の
「税法の不知」「勘違い」が起こりにくいわけです。
なぜなら税理士が申告前に「名義財産とは○○なども
含まれますよ」など注意喚起をするからです。

場合によっては、税理士が申告に当たって
名義財産が他にないことの「確認書」などを
相続人から取っているケースもあり、こうなると
相続人が「故意に」税理士に名義財産の存在を(一部)
伝えなかった=隠ぺい行為として、重加算税が
賦課される可能性が高くなってしまうわけです。

典型例は下記の公開裁決事例でしょう。

「相続財産の一部について、相続人がその存在を
認識しながら申告しなかったとしても、重加算税の
賦課要件は満たさないとした事例」

(令和元年11月19日裁決)

この裁決事例では、税理士に名義預金を伝えなかった
ことに加えて、被相続人の預金を相続人名義の口座に
入金していたことから重加算税を賦課されたのですが、
調査の段階になっても預金を移した口座を解約など
していなかった事実などから「あえて関与税理士に
本件預金の存在を伝えなかったとまで認めることは
できない」と判断されました。

相続税申告を税理士が受任していると、より
財産を隠ぺいしたのか判断が難しくなる典型例は
下記の公開裁決事例でしょう。

「みなし相続財産に該当する生命保険金が申告漏れと
なったことにつき、請求人が殊更過少な相続税申告書
を提出したとは認められないとした事例」

(令和3年2月5日裁決)

本裁決事例では、共済金を納税資金としながらも、
相続財産として申告をしていなかったケースですが、
税理士もこの共済金を申告財産と明示していなかった
ことから、「税理士は関係資料等の提出時や
申告書の作成時に請求人に対して具体的な確認等を
していなかった上、その他に、請求人が同税理士に
対して殊更にその存在を秘匿したと裏付けるに
足りる事情も存在しないことなどに照らせば、」
重加算税ではないと判断されました。

同じく、死亡保険金の存在を税理士に伝えなかった
ことを争った公開裁決事例もあります。

「当初から相続財産を過少に申告することを意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動が
あったものと認めることはできないとして、
重加算税の賦課決定処分を取り消した事例」

(令和3年3月23日裁決)

この裁決では、保険加入した銀行の担当者の
説明内容から、「本件保険金が相続税の課税の対象
とならないものと誤解した」可能性から、
相続人が保険金の存在を税理士に伝えなかった
可能性を配慮され重加算税が取り消されました。

上記の裁決事例はすべて、納税者が勝った
=重加算税が取り消された事案を取り上げましたが、
税理士が受任しているからこそ、税務調査では

税理士が名義預金を確認したにかかわらず、
納税者(相続人)が明示しなかった

(一部)財産の存在を知りながら故意に伝えなかった
(=重加算税の賦課)

と事実認定されやすいので要注意です。

最後になりますが、下記の記事(過去メルマガ)
も併せて参考にしてください。

「名義預金と重加算税」

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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