みなし贈与(相法5)に基づく住宅取得等資金贈与の検証
※2024年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下勇人です。
今回のテーマは、
「みなし贈与(相法5)に基づく住宅取得等資金贈与の検証」です。
まずは、以下の生命保険契約(養老保険)
に基づく課税関係を考えてみましょう。
契約者(保険料負担者):父
被保険者:父
満期保険金受取人:長男
死亡保険金受取人:長男
満期保険金:1,000万円
死亡保険金:1,000万円
1.満期時
長男への贈与税課税
∵ みなし贈与(相法5)
(理由)
民法549条に基づく贈与契約ではなく
保険法に基づく保険契約により
長男は財産を取得しているため、
経済的実態(無償での価値移転)に
対して、贈与税を課税するためには
相続税法で別途規定する他ない。
2.死亡時
長男への相続税課税(ただし、非課税枠あり)
∵ みなし相続(相法3(1)一)
非課税財産(相法12(1)五)
(理由)
死亡保険金は「受取人固有の財産(最判S40.2.2)」
であり、本来財産ではないため、
相続税を課税するためには
相続税法で別途規定する他ない。
ただし、相続人が取得する死亡保険金の一部は
非課税財産となる。
さて、上記生命保険に関する課税関係の検証につき
住宅取得等資金贈与(措法70の2、措法70の3)
に関連するのは、満期時となります。
■検証事項
住宅取得等資金贈与につき、両条文の出だしでは、
以下と定められています。
(措法70の2(1))
—
・・・その直系尊属からの贈与により
住宅取得等資金の取得をした特定受贈者が、・・・
—
(措法70の3(1))
—
・・・その年一月一日において
六十歳未満の者からの贈与により
住宅取得等資金の取得をした特定受贈者が、・・・
—
どちらも
「贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者」
と定められています。
今回の検証は、
ここでいう「贈与」とは、民法549条に基づく
贈与契約でなければならないのか?
になります。
つまり、満期保険金1,000万円につき、
生命保険会社から課税庁へ支払調書が提出され
確実に贈与税課税がなされることになりますが
当該1,000万円の「みなし贈与」についても
住宅取得等資金贈与に該当するか否か?が論点です。
結論は・・・
みなし贈与財産(相法5)である生命保険金
であっても、住宅用家屋の新築や取得等の
対価の支払いに充てられた場合には、
その保険金は非課税の対象となる
住宅取得等資金に当たるものと考えられます。
根拠1:
条文上、住宅用家屋の新築等の対価に充てる
ための金銭を贈与により取得した場合からは、
みなし贈与(相法5)は除外されていない。
根拠2:
贈与により取得したとみなされる保険金
としての実質は、金銭の贈与を受けた場合
と何ら変わるところがない。
また、参考までに同様の内容が
以下、国税庁の質疑応答事例にも掲載されています
ので、ご確認ください。
国税庁 質疑応答事例
贈与により取得したものとみなされる生命保険金を
住宅取得資金に充てた場合の住宅取得等資金の贈与の特例の適用
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/17/01.htm
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