取引相場のない株式評価に関する検討(4) ~純資産株価~
※2024年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、
「取引相場のない株式評価に関する検討(4) ~純資産株価~」です。
前回は、直前決算日から課税時期までに
土地売却等のアクションが起こった場合、
直前期末方式の修正方法を検討しました。
今回は、
純資産株価に計上される借地権(相当の地代方式)
を検証します。
例:
土地所有者:個人(社長)
建物所有者:法人
借地権の設定:平成15年
無償返還届出:未提出
評価対象地の借地権割合:60%
通常の地代:240万円
相当の地代:600万円
実際の地代:600万円
土地の自用地価額:1億円(※)
※ 借地権設定時から不変
権利金の授受:無
被相続人:社長
株式所有者:社長100%
(1)借地権設定時
相当の地代が支払われていますので借地権はゼロとなります。
そのため、権利金の認定課税は回避されます。
また、借地権設定時から土地の自用地評価額は
不変であるため、自然発生借地権は生じていません。
(2)被相続人の相続発生時
個別通達:相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての
相続税及び贈与税の取扱いについて
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm
6 相当の地代を収受している場合の貸宅地の評価
―――
借地権が設定されている土地について、相当の地代を収受している場合の
当該土地に係る貸宅地の価額は、次によって評価する。
(1)権利金を収受していない場合又は特別の経済的利益を受けていない場合
当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額
―――
個別通達:相当の地代を収受している貸宅地の評価について(昭和43年直資3-22)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/681028/01.htm
―――
標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、
自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)
を控除した金額により、評価することとされたい。
―――
当該2つの個別通達に基づき、
相当の地代を収受している場合の貸宅地の評価は
自用地評価額の80%となります(8,000万円)。
また、評価対象となる自社株における純資産価額に
算入される借地権は以下個別通達に基づき、
自用地評価額の20%となります(2,000万円)。
この場合、5表の記載は
帳簿価額:0円
相続税評価額:2,000万円
となります。
個別通達:相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての
相続税及び贈与税の取扱いについて
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm
6 相当の地代を収受している場合の貸宅地の評価
―――
(注)上記(1)及び(2)のただし書に該当する場合において、
被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し
土地を貸し付けている場合においては、
昭和43年10月28日付直資3-22ほか2課共同
「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」
通達(以下「43年直資3-22通達」という。)
の適用があることに留意する。
―――
個別通達:相当の地代を収受している貸宅地の評価について(昭和43年直資3-22)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/681028/01.htm
―――
なお、上記の借地権の価額は、
昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する
基本通達32の(1)の定めにかかわらず、
被相続人所有のI株式会社の株式評価上、
同社の純資産価額に算入することとされたい
―――
本来であれば、法人は相当の地代を支払っているため、
借地権は無視すべきとも考えられますが、
個別通達(昭和43年直資3-22)では、その理由として
「借地借家法における制約を受けることを鑑み」
貸宅地は借地権20%控除すべきとしています。
また、自社株における純資産価額に算入する理由として
「土地の評価額が個人と法人を通じて100%顕現することが、
課税の公平上適当と考えられる」ことを挙げています。
相続税実務としては、当該貸宅地につき、
小規模宅地等の特例適用
(特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等)
を続いて検討することになります。
次回は、相当の地代を収受している場合における
借地権計上の盲点を解説します。
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