役員賠償責任にかかる経済的利益
※2019年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
規模が大きな法人になると「株主=経営者」の構図が崩れ、
株主に第三者が入り、役員の数も増えていきます。
さらに昨今は特に、法整備や情報取得の容易さによって
法人が損害賠償請求されるリスクも高まっていることから
「会社役員賠償責任保険」に加入する会社も増えています。
今回は、役員賠償責任にかかる
経済的利益の課税関係について解説します。
まず、役員賠償責任保険の保険料の税務処理です。
旧来から規定されている個別通達を確認しましょう。
「会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/040120/01.htm
この個別通達では、下記で切り分けされています。
○基本契約の保険料:経済的利益はない(給与課税なし)
○特約保険料:役員に対する給与課税
(配分・計算方法は個別通達のとおり)
一方で、上記個別通達はいかされたまま、
会社法の改正にともなって新たな個別通達ができました。
「新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/160218/index.htm
現行法では、会社が利益相反の問題を解消するために、
・取締役会の承認
・社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意
又は社外取締役全員の同意の取得
の手続を行えば、会社が株主代表訴訟敗訴時担保部分に
係る保険料を会社法上適法に負担することができる
ようになりました。
上記の手続きを経ることによって会社法上、
法人が保険料を適法に負担した場合には、
経済的利益は生じない・給与課税しないでいい、
という内容に一部変更・追加されています。
手続きによって税務処理が変わることになりますから、
ぜひ注意してください。
また、訴訟にかかる弁護士費用等も注意が必要です。
株主代表訴訟は、会社が役員の会社に対する責任を
追及しない場合、株主自身が会社のために
役員の責任を追及するものですから、本来
その役員個人が争訟費用等を負担する義務があります。
このことから、弁護士報酬などの争訟費用を
会社が負担した場合の経済的利益・給与課税
については、訴訟の結果によって分類されます。
○役員勝訴の場合
役員は適正に職務を遂行したと認められたことから
役員に対して給与課税しないことになります
○役員敗訴の場合
上記の逆となりますので、会社が負担した争訟費用は
役員に対する賞与として課税しなければなりません
○訴訟の取り下げ
この場合、役員の責任は明確になっていませんが、
敗訴が確定していないことから、職務遂行の
適正性が推認され、給与課税しないことになります
「株主代表訴訟に係る弁護士費用等の負担」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/32.htm
役員賠償責任が問われるケースが増えており、
損害保険の加入をしている会社も増えましたが、
上記の税務処理は誤らないようにしてください。
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