• HOME
  •  › ブログ
  •  › 必要経費と認められるにはその必要性が必要
2020.05.15

必要経費と認められるにはその必要性が必要

※2019年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

前回に引続き、個人事業主から同族法人に対して
支払った外注費が否認されるケースについて、
税務調査の実例をまじえて深掘りしていきます。

さて、この内容について昨年秋の税務調査で
否認指摘を受けた内容を先に共有しましょう。

【実際の調査事案】

・士業(個人事業主)に対する税務調査

・同族法人に外注費を年間1千万円弱支払い

・同族法人に籍を置くのは、事業主(士業)
のみで、従業員などはすべて個人事務所

・依頼はすべて士業事務所との契約で、
法人での契約・独自の売上はなし

・同族法人から代表者である士業に対して
役員報酬の支払いがあり

・税務署の特官から外注費の否認指摘を受けた
(必要経費の否認で行為計算否認ではない)

・特官の言い分は「必要経費として認められる
ためには、この外注費を支払うための
必要性が必要であり、個人事業主として
できる業務を法人に委託する必要性はない」
として否認指摘

・実際には給与計算のレビュー業務などを
法人に振った形にはなっているが、
士業事務所内で完結させることは可能

さて、実際にこの調査事案でも平行線が
続いたのですが、税務署は「支払う必要がない」
納税者側は「支払う必要があった」という
水掛け論でしかなく、決め手はありません。

また、この特官は「法人を設立した経緯・目的」
にやたらこだわって質問してきましたが、
本来の目的は「(労務系の)コンサル事業」
をすることが目的だったものが、今は
無目的になっていることは事実で、
現時点での法人の売上は、個人事務所からの
外注費のみとなっています。

なお、この特官が指摘する「必要性」
ですが、所得税法第37条等を読むと、
「事業関連性」のみならず、その「必要性」
が問われることになります。

当然ながら、実際に支払ったから
必要経費として認められるわけではなく、
客観的に支払う必要性があったのかも
判断基準になるということですから、
この特官が指摘している論理は、何も
根拠がないというわけではありません。

本調査事案で個人的に思うのは、調査対象と
なった個人事業主は簡易課税で、
売上規模に比して調査担当が特官(と特官付)
になっていることから、この外注費を
ピンポイントに狙いに来たのではないか、
と推察します。

また、前回取り上げた大阪地裁の
判決ですが、昨年4月の判決であることから、
この判決内容を知っている可能性も高い、
とも推察しました。

大阪地裁(平成30年4月19日判決)で
ありましたが、「本来は必要経費に算入する
ことのできない事業主自身の労働の対価を、
個人事業の必要経費とすることができること」
となっており、かつ給与所得控除の適用および
法人税率が低いことから、全体として
税額が下がっていることは事実です。

さて、ここまでですでに長くなりましたので、
「どうすれば否認(指摘)されないのか?」
「何が論点になり得るのか?」
については、次回に譲ります。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。