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2025.05.14

新しい資本主義実現会議における事業承継税制改正議論の検証

※2024年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下勇人です。

今回のテーマは、
「新しい資本主義実現会議における事業承継税制改正議論の検証」です。

日本経済新聞でも取り上げられた記事を
御覧になりましたでしょうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA05E240V00C24A6000000/

「事業承継の税優遇、要件緩和へ 後継者の選任25年以降も」
という見出しとなっており、
多くの税理士が興味を引く内容でした。

上記を検討する前に、
まずは、現行制度を検討します。

事業承継税制(特例版)における
特例後継者(特例経営承継受贈者)が
備えるべき要件の1つに
役員継続3年要件があります
(措法70の7の5(2)六へ)。

当該個人が、当該贈与の日まで引き続き三年以上にわたり

当該特例認定贈与承継会社の役員その他の地位として

財務省令で定めるものを有していること。

1.役員とは?
ここでいう「役員の地位として財務省令で定めるもの」
とは、以下の定めとなっています(措規23の12の2(10))。

第二十三条の九第九項及び第十項の規定は、

法第七十条の七の五第二項第六号ヘに規定する役員

その他の地位として財務省令で定めるものについて準用する。

上記は準用条文となっており
非常に読みにくい条文ですが、
事業承継税制(一般版:措法70の7)を
準用しています(措規23の9(9))。

法第七十条の七第二項第三号ヘに規定する役員の地位として

財務省令で定めるものは、会社法第三百二十九条第一項に

規定する役員とする。

つまり・・・
会社法上の役員(会社法329(1))を指します。

役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。

以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)

及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

結論としては、
取締役、会計参与、監査役のいずれか
を指すことになります。

実務的には、会計参与の選択はほとんどなく
取締役に就任することが想定されますが、
監査役という可能性も若干残るかもしれません。

2.「当該贈与の日まで引き続き」とは?
3年間の「継続」が求められることになります。
つまり、1日でも役員でない期間が
あれば、要件を満たさないことになります
ので、注意が必要です。

実務的には、
登記簿謄本で確認することになります。

また、監査役を辞任して取締役に就任する
場合にも、1日でも空白期間が生じないように
留意する必要があります。

上記を踏まえ、
今回の改正議論を検証します。

内閣官房HP 新しい資本主義実現会議(第28回)
議事:新しい資本主義2024年改訂版案の決定について
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai28/shiryou1.pdf
P22(全体ページでは26/129)
(2)事業承継支援の多様化 1事業承継税制の役員就任要件の検討


事業承継税制については、現行では、その利用のために、

役員就任要件(実際の承継時に、後継者が役員に就任して3年以上

経過している必要があるという要件)を満たす必要があり、

特例措置を利用する場合、本年12月末

(実際の税制上の承継期限である2027年 12月末の3年前)

までに後継者が役員に就任している必要がある。

来年以降に事業承継の検討を本格化させる事業者にとって、

本年12月までに後継者を役員に就任させることは困難であり、

事業承継税制を最大限活用する観点から、役員就任要件の在り方を検討する。

事業承継税制(特例版)の適用期限
である令和9年12月31日までに役員就任が
3年継続している必要があるため、
令和6年12月末までに役員就任していなければ
ならないというのが現行制度です。

令和6年12月末までに役員就任させられない
中小企業も多く存在することが想定されるため
「役員就任要件の在り方を検討する」
としています。

これが具体的に、
どのような改正に落ち着くのかは
この書きぶりからはハッキリしませんが、
適用期限の延長がないことを前提にすれば
3年継続要件を短縮する案が有力なのでは
ないかと考えています(私見)。

令和7年度税制改正大綱に記載される
可能性が高い重要な改正項目になりますので
中小企業庁からの税制改正要望を待ちたいと
思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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