新しい資本主義実現会議における事業承継税制改正議論の検証
※2024年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下勇人です。
今回のテーマは、
「新しい資本主義実現会議における事業承継税制改正議論の検証」です。
日本経済新聞でも取り上げられた記事を
御覧になりましたでしょうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA05E240V00C24A6000000/
「事業承継の税優遇、要件緩和へ 後継者の選任25年以降も」
という見出しとなっており、
多くの税理士が興味を引く内容でした。
上記を検討する前に、
まずは、現行制度を検討します。
事業承継税制(特例版)における
特例後継者(特例経営承継受贈者)が
備えるべき要件の1つに
役員継続3年要件があります
(措法70の7の5(2)六へ)。
—
当該個人が、当該贈与の日まで引き続き三年以上にわたり
当該特例認定贈与承継会社の役員その他の地位として
財務省令で定めるものを有していること。
—
1.役員とは?
ここでいう「役員の地位として財務省令で定めるもの」
とは、以下の定めとなっています(措規23の12の2(10))。
—
第二十三条の九第九項及び第十項の規定は、
法第七十条の七の五第二項第六号ヘに規定する役員
その他の地位として財務省令で定めるものについて準用する。
—
上記は準用条文となっており
非常に読みにくい条文ですが、
事業承継税制(一般版:措法70の7)を
準用しています(措規23の9(9))。
—
法第七十条の七第二項第三号ヘに規定する役員の地位として
財務省令で定めるものは、会社法第三百二十九条第一項に
規定する役員とする。
—
つまり・・・
会社法上の役員(会社法329(1))を指します。
—
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。
以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)
及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
—
結論としては、
取締役、会計参与、監査役のいずれか
を指すことになります。
実務的には、会計参与の選択はほとんどなく
取締役に就任することが想定されますが、
監査役という可能性も若干残るかもしれません。
2.「当該贈与の日まで引き続き」とは?
3年間の「継続」が求められることになります。
つまり、1日でも役員でない期間が
あれば、要件を満たさないことになります
ので、注意が必要です。
実務的には、
登記簿謄本で確認することになります。
また、監査役を辞任して取締役に就任する
場合にも、1日でも空白期間が生じないように
留意する必要があります。
上記を踏まえ、
今回の改正議論を検証します。
内閣官房HP 新しい資本主義実現会議(第28回)
議事:新しい資本主義2024年改訂版案の決定について
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai28/shiryou1.pdf
P22(全体ページでは26/129)
(2)事業承継支援の多様化 1事業承継税制の役員就任要件の検討
—
事業承継税制については、現行では、その利用のために、
役員就任要件(実際の承継時に、後継者が役員に就任して3年以上
経過している必要があるという要件)を満たす必要があり、
特例措置を利用する場合、本年12月末
(実際の税制上の承継期限である2027年 12月末の3年前)
までに後継者が役員に就任している必要がある。
来年以降に事業承継の検討を本格化させる事業者にとって、
本年12月までに後継者を役員に就任させることは困難であり、
事業承継税制を最大限活用する観点から、役員就任要件の在り方を検討する。
—
事業承継税制(特例版)の適用期限
である令和9年12月31日までに役員就任が
3年継続している必要があるため、
令和6年12月末までに役員就任していなければ
ならないというのが現行制度です。
令和6年12月末までに役員就任させられない
中小企業も多く存在することが想定されるため
「役員就任要件の在り方を検討する」
としています。
これが具体的に、
どのような改正に落ち着くのかは
この書きぶりからはハッキリしませんが、
適用期限の延長がないことを前提にすれば
3年継続要件を短縮する案が有力なのでは
ないかと考えています(私見)。
令和7年度税制改正大綱に記載される
可能性が高い重要な改正項目になりますので
中小企業庁からの税制改正要望を待ちたいと
思います。
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