書面添付における税理士のリスク
※2019年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
書面添付をすることで、実地調査に入られる確率は
確実に下がることがわかっているものの、
書面添付することによる税理士本人の
リスクを考えると、書面添付することに
躊躇するという税理士も多いようです。
一方で、その「リスク」に着目はしながらも、
具体的にどのようなリスク(罰則)があるのか
理解していない税理士も多いですから、
本稿では、書面添付をする税理士のリスク
について具体的に解説しましょう。
まず税理士法にある、書面添付をした場合の
懲戒規定から確認してみましょう。
税理士法第46条(一般の懲戒)
財務大臣は、前条の規定に該当する場合を除くほか、
税理士が、第三十三条の二第一項若しくは
第二項の規定により添付する書面に虚偽の記載を
したとき、又はこの法律若しくは国税若しくは
地方税に関する法令の規定に違反したときは、
第四十四条に規定する懲戒処分をすることができる。
ここでは「虚偽の記載」が何なのかが
論点になるわけですが、この点は
通達に解釈が規定されています。
税理士法基本通達46-1(添付書面の虚偽記載)
法第46条に規定する「第33条の2第1項若しくは
第2項の規定により添付する書面に虚偽の記載を
したとき」とは、当該書面に記載された内容の全部
又は一部が事実と異なっており、かつ、当該書面を
作成した税理士がそのことをあらかじめ知っていた
と認められる場合をいうものとする。
以上から、税理士として【事実を知りながら】
事実とは違う記載をする=虚偽の記載
とされており、裏を返すと事実と相違する記載を
してしまったとしても「事実を知らなかった」
「顧問先から聞かされていない」のであれば
税理士が虚偽記載したことにはなりません。
もちろん、税理士が「確認していない事項」は
書面添付に記載する必要はありませんし、
記載していない以上は、虚偽記載に
該当しようもない、ということになります。
また、国税庁サイトでは「税理士法違反行為Q&A」
が公開されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/ihan/menu.htm
この問3-8では、「「法第33条の2第1項若しくは
第2項の規定により添付する書面に虚偽の記載」が
あったとして行われる法第46条の規定による
懲戒処分は、どのような内容ですか。」として、
書面添付における税理士の懲戒基準を挙げています。
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/ihan/qa03.htm#a3-8
(事例8) 税理士甲は、関与先である法人Aの
法人税の確定申告に当たり、支払手数料に関する
契約や支払事実が無いことを法人Aの代表者乙から
知らされて認識していたにもかかわらず、
乙からの要請を受けて架空の支払手数料を
計上することにより、所得金額を不正に圧縮した
真正の事実に反する申告書を作成した。
また、甲は、上記の申告書の作成に当たり、
法第33条の2第1項の規定により添付する書面に
「支払手数料について、その支払先とされた法人
との契約内容等を検証し、金額の妥当性について
審査した」旨の事実と異なる虚偽の記載をした。
以上のように、書面添付における税理士のリスクは
かなり限定的だと理解できますが、一方で
一般的に税理士は、書面添付におけるリスクを
漠然として捉えていることから、書面添付の判断を
迷いがちだと思います。
上記のように、懲戒リスクを具体的に認識・理解した
うえで、書面添付をする・しないを
顧問先ごとに判断すべきでしょう。
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