現物給与を課税しない趣旨・まとめ(2)
※2019年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回から引続き、
現物給与を課税しない通達規定の趣旨について、
今回と次回で3つに大別して解説していきます。
本来は経済的利益が発生しているが、
通達で課税対象外と規定されている趣旨は
大きく下記の3つに分類することができます。
(1)業務の遂行上で必要である
(2)経済的利益の帰属が不明確
(3)少額不追及
なお、全ての通達規定を取り上げることは
不可能なので代表的なものだけを取り上げますが、
基本的に現物給与に課税しない通達規定は
上記3つのどれかに分類されると考えてください。
まず「(1)業務の遂行上で必要である」ものの
代表例は、資格取得・研修費用等に給与課税しない
所得税基本通達36-29の2の規定でしょう。
また、残業時の食事代支給(所基通36-24)も
この趣旨に則っています。
業務を遂行するうえで必要な費用であって、
業務をしないのであれば不要な費用と考え、
【費用弁償】として、役員・従業員には
経済的利益として課税しないという趣旨です。
これらの費用を給与収入に含めるとすると、
職業上必要な費用として必要経費に算入される
べき内容であることから、従業員には
実質的に所得が発生しないという考え方です。
所基通36-33にある「使用者が負担する役員
又は使用人の行為に基因する損害賠償金等」も
同じ趣旨だといえるでしょう。
また「(2)経済的利益の帰属が不明確」は、
例えば法人が福利厚生施設の利用料を支払い、
全役員・従業員が利用できる状況にある場合、
その経済的利益が誰に・いくら発生したのかを
特定・測ることができないようなケースです。
こういう意味合いにおいては、
○所基通36-29にある「福利厚生のための
施設の運営費等を負担する」規定
もしくは
○所基通36-34~36-35にある
「ゴルフクラブ・レジャークラブ・社交団体
の入会金等」の規定
がこれに該当します。
また、生命保険・損害保険の保険料負担について
給与課税しない要件として、所基通36-31~
36-31の2に規定がありますが、
これも趣旨は同じで、どの役員・従業員に
経済的利益が発生しているのか不明確ですから
課税しない、という規定趣旨になっています。
次回は、残りの
「(3)少額不追及」趣旨を取り上げます。
なお、今一度確認しておきますが、
現物給与に課税しない通達規定は、
その【趣旨】が大事になり、税務調査で
否認指摘された場合は「その趣旨に則っている」
と反論することが可能となるわけです
(前回解説しました)。
お勉強的な通達分類ではなく、実務を想定した
分類を「理解」していただければと思います。
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