• HOME
  •  › ブログ
  •  › 相続時精算課税のリスク確認(3)
2025.05.14

相続時精算課税のリスク確認(3)

※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下勇人です。

今回も前回に引き続き
「相続時精算課税のリスク確認」を解説していきます。

「相続時精算課税のリスク」項目を
列挙すると以下のとおりとなります。
1.選択後は暦年課税に戻れない
2.基礎控除を超える贈与は「期限内」申告が必要
3.小規模宅地等の特例は適用不可
4.相続税が発生することあり
5.物納不可
6.特定贈与者よりも受贈者が先に死亡する

前回は、
2.基礎控除を超える贈与は「期限内」申告が必要
を確認しました。

今回は、
3.小規模宅地等の特例は適用不可
を確認したいと思います。

小規模宅地等の特例の根拠条文を
少し確認します(措法69の4(1))。
―――
個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、・・・
―――

1項の出だしを抜粋しましたが、
「相続又は遺贈により取得・・・」
とありますので、取得原因は
相続か遺贈に限定されてしまっています。

つまり、
暦年課税でも相続時精算課税でも
贈与であるため、
小規模宅地等の特例が適用できないことになります。

相続時精算課税で贈与する場合には
小規模宅地等の特例を適用すべきと、
税理士会が毎年改正要望を出していますが
なかなか実現することはなさそうです。

ここで、
以下のケースを想定してみます。

収益物件(アパート)とその敷地を父が
所有しているとします。

父の所得税対策として、アパート建物のみを
長男へ相続時精算課税で贈与するとします。

また、父と長男は生計別とします。

そうすると、
敷地は父、建物は長男となりますが、
使用貸借通達を使うためには、
土地については使用貸借契約とします。

父の相続発生に伴い、その敷地を
長男が相続した場合、小規模宅地等の特例
(貸付事業用宅地等)の適用が可能でしょうか。

相続時精算課税で贈与しているのは
建物のみであり、土地は贈与していないため
相続を原因でその敷地を取得するため
小規模宅地等の特例の適用可能性は残ります。

結論としては、
小規模宅地等の特例の適用は不可となります。

相続した土地については
被相続人の事業の用に供されていないためです。

つまり、土地を使用貸借としている以上、
事業の用に供されていないことになります。

仮に、父の生前に土地について
賃貸借契約としておけば、適用可能性が残ります。

ただし、相当の地代以下の場合、
権利金の認定課税の可能性が残りますので
留意が必要です。

次回も引き続き
相続時精算課税のリスク確認(4)を
確認することにします。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。