相続時精算課税のリスク確認(4)
※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下勇人です。
今回のテーマは、
「相続時精算課税のリスク確認(4)」です。
今回も前回に引き続き
「相続時精算課税のリスク確認」を解説していきます。
「相続時精算課税のリスク」項目を
列挙すると以下のとおりとなります。
1.選択後は暦年課税に戻れない
2.基礎控除を超える贈与は「期限内」申告が必要
3.小規模宅地等の特例は適用不可
4.相続税が発生することあり
5.物納不可
6.特定贈与者よりも受贈者が先に死亡する
前回は、
3.小規模宅地等の特例は適用不可
を確認しました。
今回は、
4.相続税が発生することあり
を確認したいと思います。
検討にあたり、
相続時精算課税の歴史的経緯
と基礎控除(相続税)を確認します。
―――
(1)平成15年度税制改正(創設)
贈与者の要件:
贈与をした年の1月1日において65歳以上の父母
受贈者の要件:
贈与を受けた年の1月1日において
20歳以上の贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人
施行日:
平成15年1月1日以後の贈与
→ 基礎控除
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
(2)平成25年度税制改正(改正)
贈与者の要件:
贈与をした年の1月1日において
60歳以上の父母又は祖父母
受贈者の要件:
贈与を受けた年の1月1日において
20歳以上の贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人、
又は、孫
施行日:
平成27年1月1日以後の贈与
→ 基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数
(3)令和元年度税制改正(改正)
贈与者の要件:
贈与をした年の1月1日において
60歳以上の父母又は祖父母
受贈者の要件:
贈与を受けた年の1月1日において
18歳以上の贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人、
又は、孫
施行日:
令和4年4月1日以後の贈与
→ 基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数
―――
歴史的な経緯と基礎控除(相続税)
を並列させると今回の検証の本質が見えてきます。
平成15年1月1日~平成26年12月31日
この期間に相続時精算課税を選択して贈与できたのは
推定相続人(多くは子、代襲相続の場合は孫)
です。
被相続人:父
推定相続人:長男・長女
とすると、
当時の基礎控除は7,000万円でした。
被相続人の所有する財産が
7,000万円以下であれば
相続時精算課税を選択して
2,500万円贈与したとしても、
当時の基礎控除であれば、
相続時に相続税負担は生じないはずでした。
しかしながら、
平成25年度税制改正により
平成27年1月1日以後に相続については
基礎控除が縮減されてしまったため、
贈与時の思惑から外れてしまったケースが
顕在化されています。
創設当初、税制改正リスクまで説明して
相続時精算課税の選択を提案できたかは
ケースバイケースかと思いますが、
数は多くないのではないでしょうか。
おそらく、基礎控除が縮減される改正話が
表に出始めた平成23年度ぐらいからは
相続時精算課税の提案は
相対的に少なくなったのはではないかと
推察します。
平成27年1月1日以後の贈与については
基礎控除(相続税)も縮減されているため
将来的に相続時に相続税負担が生じる
可能性があることは贈与時には想定できますので
相続時精算課税を提案するのは
メリットを相当享受できるケースに
限られたのではないでしょうか。
令和5年度税制改正による
基礎控除(贈与税)の新設
+ 相続時の精算なし
という扱いは、
メリットだけになる扱いですが、
将来の税制改正リスクだけは
念のために説明しておいた方が
無難かもしれません。
次回も引き続き
相続時精算課税のリスク確認(5)を
確認することにします。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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