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2025.05.14

相続時精算課税のリスク確認(5)

※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下勇人です。

今回のテーマは、
「相続時精算課税のリスク確認(5)」です。

今回も前回に引き続き
「相続時精算課税のリスク確認」を解説していきます。

「相続時精算課税のリスク」項目を
列挙すると以下のとおりとなります。
1.選択後は暦年課税に戻れない
2.基礎控除を超える贈与は「期限内」申告が必要
3.小規模宅地等の特例は適用不可
4.相続税が発生することあり
5.物納不可
6.特定贈与者よりも受贈者が先に死亡する

前回は、
4.相続税が発生することあり
を確認しました。

今回は、
5.物納不可
を確認したいと思います。

物納の概要、相続時精算課税との関係は
以下のとおりです。

■相続税に限っての制度
本来、国税は金銭で納付することが原則です。

しかしながら、相続税に限っては、
延納によっても金銭で納付することを困難
とする事由がある場合には、
納税者の申請により、
その納付を困難とする金額を限度として
一定の相続財産による納付(物納)ができます。

金銭納付が困難な状況を作り上げることが

可能であればいきなり進める訳ではなく、

延納によっても金銭納付が困難な状況を

作り出せなければ物納へ進むことはできない

ことには注意が必要です。

■平成18年度税制改正
相続税の物納制度について
手続の明確化・迅速化等の観点から、
納税環境整備の一環として、
(1)物納不適格財産の明確化
(2)物納手続の明確化
(3)物納申請の許可に係る審査期間の法定等
(4)延納中に延納困難となった場合に物納を認める制度の導入
(5)物納に係る利子税の整備等による利便性の向上等
の見直しが行われました。

上記改正前は比較的物納は実務でも
用いられてきましたが、上記改正後は
物納は適用が困難な状況が多くなった
ように感じます。

実務では、財務局とのやり取りになりますが、
物納の要件を満たすよう、かなり細かな整備を
要求される印象です。

参考:国税庁HP
相続税の物納の手引(手続編)
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/pdf/3001tebiki02.pdf

相続税の物納の手引(整備編)
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/pdf/3001tebiki03.pdf

■相続時精算課税と物納との関係
相続税法41条2項(物納の要件)において
物納に充てることができる財産を規定していますが、
その内容は以下のとおりです。

・納税義務者の課税価格計算の基礎となつた財産

(当該財産により取得した財産を含み、第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を除く。)で
・この法律の施行地にあるもののうち
・次に掲げるもの(管理又は処分をするのに不適格なものとして政令で定めるもの

(第四十五条第一項において「管理処分不適格財産」という。)を除く。)

上記の3つの要件の最初で
「21条の9第3項の規定の適用を受ける財産を除く」
とされているため、
相続時精算課税を選択して取得した財産については
物納の要件に該当しないことが法定化されています。

その理由としては、
同制度の受贈財産は、
贈与時の時価で相続財産と合計するため、
「昨今のようなデフレが続けば、課税価格よりも相続時の時価のほうが低くなる可能性がある」ため
と言われています。

令和6年から相続時精算課税選択者が
増加することが予想されますが、
土地の物納戦略を検討されている場合には
相続時精算課税を選択しての土地贈与は
控えておくことをおススメします。

次回も引き続き
相続時精算課税のリスク確認(6)を
確認することにします。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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