相続時精算課税のリスク確認(5)
※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下勇人です。
今回のテーマは、
「相続時精算課税のリスク確認(5)」です。
今回も前回に引き続き
「相続時精算課税のリスク確認」を解説していきます。
「相続時精算課税のリスク」項目を
列挙すると以下のとおりとなります。
1.選択後は暦年課税に戻れない
2.基礎控除を超える贈与は「期限内」申告が必要
3.小規模宅地等の特例は適用不可
4.相続税が発生することあり
5.物納不可
6.特定贈与者よりも受贈者が先に死亡する
前回は、
4.相続税が発生することあり
を確認しました。
今回は、
5.物納不可
を確認したいと思います。
物納の概要、相続時精算課税との関係は
以下のとおりです。
■相続税に限っての制度
本来、国税は金銭で納付することが原則です。
しかしながら、相続税に限っては、
延納によっても金銭で納付することを困難
とする事由がある場合には、
納税者の申請により、
その納付を困難とする金額を限度として
一定の相続財産による納付(物納)ができます。
金銭納付が困難な状況を作り上げることが
可能であればいきなり進める訳ではなく、
延納によっても金銭納付が困難な状況を
作り出せなければ物納へ進むことはできない
ことには注意が必要です。
■平成18年度税制改正
相続税の物納制度について
手続の明確化・迅速化等の観点から、
納税環境整備の一環として、
(1)物納不適格財産の明確化
(2)物納手続の明確化
(3)物納申請の許可に係る審査期間の法定等
(4)延納中に延納困難となった場合に物納を認める制度の導入
(5)物納に係る利子税の整備等による利便性の向上等
の見直しが行われました。
上記改正前は比較的物納は実務でも
用いられてきましたが、上記改正後は
物納は適用が困難な状況が多くなった
ように感じます。
実務では、財務局とのやり取りになりますが、
物納の要件を満たすよう、かなり細かな整備を
要求される印象です。
参考:国税庁HP
相続税の物納の手引(手続編)
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/pdf/3001tebiki02.pdf
相続税の物納の手引(整備編)
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/pdf/3001tebiki03.pdf
■相続時精算課税と物納との関係
相続税法41条2項(物納の要件)において
物納に充てることができる財産を規定していますが、
その内容は以下のとおりです。
・納税義務者の課税価格計算の基礎となつた財産
(当該財産により取得した財産を含み、第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を除く。)で
・この法律の施行地にあるもののうち
・次に掲げるもの(管理又は処分をするのに不適格なものとして政令で定めるもの
(第四十五条第一項において「管理処分不適格財産」という。)を除く。)
上記の3つの要件の最初で
「21条の9第3項の規定の適用を受ける財産を除く」
とされているため、
相続時精算課税を選択して取得した財産については
物納の要件に該当しないことが法定化されています。
その理由としては、
同制度の受贈財産は、
贈与時の時価で相続財産と合計するため、
「昨今のようなデフレが続けば、課税価格よりも相続時の時価のほうが低くなる可能性がある」ため
と言われています。
令和6年から相続時精算課税選択者が
増加することが予想されますが、
土地の物納戦略を検討されている場合には
相続時精算課税を選択しての土地贈与は
控えておくことをおススメします。
次回も引き続き
相続時精算課税のリスク確認(6)を
確認することにします。
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