• HOME
  •  › ブログ
  •  › 相続税の総額計算における盲点
2025.05.16

相続税の総額計算における盲点

※2024年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

今回のテーマは、
「相続税の総額計算における盲点」です。

相続税の総額計算は、相続税法16条にて
以下のように規定されています。
―――
相続税の総額は,同一の被相続人から相続又は遺贈により
財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格に
相当する金額の合計額からその遺産に係る基礎控除額を
控除した残額を当該被相続人の前条第2項に規定する
相続人の数に応じた相続人が民法第900条(法定相続分)
及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定による
相続分に応じて取得したものとした場合における
その各取得金額(当該相続人が,1人である場合
又はない場合には,当該控除した残額)につき
それぞれその金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分して
それぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて
計算した金額を合計した金額とする。
(表は中略)
―――

具体的には、
相続や遺贈および
相続時精算課税の適用を受ける財産
(「相続時精算課税適用財産」といいます。)を
贈与によって「取得した人ごと」に、
課税価格を次のように計算します。

「取得した人ごと」に
という箇所がポイントになります。

簡単な相続税試算を行う場合、
1.各財産の評価額を算出
2.各財産の評価額を合計
3.そこから基礎控除額を控除
4.法定相続分で各相続人に割り付け
5.相続人ごとに税額計算
6.各相続人の税額を合計する
ことにより、相続税の総額を計算します。

実務で誤りやすいポイントは
2.各財産の評価額を合計
です。

以下の例で検討します。

■推定相続人 2人(長男、次男)

■各財産評価額
1.アパート敷地  8,000万円
2.アパート建物  5,000万円
3.自宅敷地    2,000万円
4.自宅建物    1,000万円
5.現金預金    8,000万円
6.アパート借入金 ▲2億円
合計 4,000万円

ここから基礎控除4,200万円を控除すると
▲200万円となるため、申告不要となると
判断されてしまいます。

この現象は、アパート建築業者が
相続税試算を行うと起こりやすいものと
いえます。

相続税法16条で規定しているのは
相続又は遺贈により財産を取得した人ごとの
課税価格の合計額から基礎控除を控除する
としています。
(相続時精算課税による贈与取得は
 簡略化のために省略します)

ここで、上記財産を長男・次男が
以下のように相続したものとします。

1.アパート敷地  8,000万円(長男)
2.アパート建物  5,000万円(長男)
3.自宅敷地    2,000万円(次男)
4.自宅建物    1,000万円(次男)
5.現金預金    2,000万円(長男)
  現金預金    6,000万円(次男)
6.アパート借入金 ▲2億円 (長男)

このように相続した場合、
長男:▲5,000万円
次男:9,000万円
となります。

ここで、以下のタックスアンサーを
ご確認ください。

国税庁HP タックスアンサー No.4152 相続税の計算
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
「各人の課税価格の計算」における計算式において、
純資産価額(赤字のときは0)との記載があります。
つまり、財産取得者の中に赤字があれば、
切捨てられてしまうことを意味します。

このように考えると、
長男:▲5,000万円
次男:9,000万円
合計 4,000万円ではなく

長男:▲5,000万円 → 0(ゼロ)
次男:9,000万円
合計 9,000万円となり、
基礎控除4,200万円を控除しても
プラスとなりますので、次男だけが申告義務が
生じます。

融資を受けて収益不動産を建築する場合、
遺産分割の内容次第で、このリスクが
顕在化しますので、相続税の試算をする場合には
必ず、分割の内容も確認することをおすすめします。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。