税理士に事実の一部を伝え漏れたら重加算税なのか?
※2020年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
個人の確定申告業務が佳境に入りました。
特にこの時期は年1・スポットの申告依頼で、
情報のやり取りがうまくいかないことがあります。
法人のように、継続的な関与をしているのであれば
漏れていた資料等があっても把握できるということも、
年1・スポットの依頼であれば税理士・会計事務所が
把握できないケースも多くあります。
例えば、
・個人事業の口座1つが丸々漏れていた
・譲渡所得の資料が一部しかないまま
措置法など特例の適用を受けた(判断誤り)
というようなケースで、これらは相続税申告で
あれば実務上よく起こる「伝え漏れ」です。
このようなケースで、税務調査において
漏れや適用誤りが発覚した場合に、
隠ぺい行為と事実認定され、重加算税と
指摘される場合が多いです。
実際に、直近の公開裁決事例を見ても、
納税者(関与先)が税理士に事実関係の一部しか
提出しなかった、もしくは誤認・誤解したまま
資料を誤って提示し、重加算税が課されて
争った事例が多くあります。
その典型的な事例として「譲渡した土地の全てに
居住用財産の譲渡所得の特別控除を適用できる
ものと誤解し、確定申告をした可能性があると
いわざるを得ず、当初から所得を過少に申告する
ことを意図していたと認めることはできないとして、
重加算税の賦課要件を満たさないと判断した」
下記の裁決事例があります。
平成30年9月27日公開裁決事例
http://www.kfs.go.jp/service/JP/112/02/index.html
また、相続税申告の事例としては、
「各共済契約に係る権利及び出資金を相続財産
として申告しなかったことについて、相続税を
当初から過少に申告することを意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動を
した上、その意図に基づく過少申告をしたもの
とは認めることができない」とした事例もあります。
平成30年10月2日裁決公開裁決事例
http://www.kfs.go.jp/service/JP/113/02/index.html
どちらの裁決事例も納税者の誤解・誤認であり、
また税務調査では事実関係をそのまま答弁するなど、
隠ぺいする意図が見られないとして、
重加算税の取消しとなっています。
同じように、個人事業主の口座1つが漏れていた
事例については、下記のメルマガで
過去にも取り上げたことがあります。
どれも重加算税が取り消されてはいますが、
税理士・会計事務所と納税者の意思疎通が
うまくいかない中での申告であることは
間違いなく、また税務調査では
重加算税を課されたことは事実です。
顧問先・関与先が粗いことが想定される場合、
また誤認・誤解を生まないように、
相手方の認識をきちんとヒアリングすること、
さらに確認は何度か行った方がいいでしょう。
税理士・会計事務所あるあるの話といえ、
納税者から「税理士の説明が悪かった」
と言われるリスクも確実にあります。
ぜひ、注意してください。
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