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2025.11.21

粉飾の正しい是正法(税務的観点)~後編~

※2024年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガに引続き、今回も
「粉飾を税務上で是正する方法」を取り上げます。

粉飾を是正するには更正の請求をすべきであり、
その年数(粉飾の場合は10年可能な場合が多いはず)
については注意が必要なのですが、粉飾=仮装経理に
基づく更正の請求には特有の論点があります。

まず重要なポイントは、粉飾を是正する更正の請求が
認められた場合であっても、法人税(および地方税)は
【すぐに還付されず】過去の過大税額については、
翌期以降に発生する法人税(と地方税)から
控除(減額)されることになります。

法人税法第70条(仮装経理に基づく
過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)
内国法人の各事業年度開始の日前に開始した事業年度の
所得に対する法人税につき税務署長が更正をした場合において、
当該更正につき第135条第1項の規定の適用があつたときは、
当該更正に係る同項に規定する仮装経理法人税額は、
当該各事業年度の所得に対する法人税の額から控除する。

この点は実務上注意が必要で、粉飾を是正する更正の請求を
提出した理由・事情が、還付税額を運転資金等に
充てるということであれば、この目的は果たせません
(違う論点については下記を参照してください)。

なお、粉飾=仮装経理による過大税額は、翌期以降の
税額から【5年間にわたって控除】され、5年を
超えた時点で控除しきれなかった税額があった場合、
その時点で還付を受けることになります(最終精算)。

一方で、消費税法には上記のような仮装経理にともなう
更正の請求の例外規定は存在しませんので、
更正の請求が通れば【消費税は即時に還付されます】
(一般的な更正の請求と同じ還付手続きです)。

この両税目の違いを考慮したうえで、顧問先の
資金繰りを検討する必要があります。

さて、粉飾を是正する更正の請求に関してもう1つ、
認識を誤りやすい事由として国税庁サイトがあります。

「仮装経理 更正の請求」などネット検索すると、
最上位に表示されるのが下記サイトになります。

国税庁サイト「C1-54 仮装経理に基づく過大申告の場合
の更正に伴う法人税額・地方法人税額の還付の請求」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_72.htm

この還付請求書および記載要領を見ると、
「更生・再生手続/特別清算から1年以内」となっており
上記の解説・説明と違うじゃないか、と思われる方が
多いのですが、この手続きは「法人税法第135条第4項」
が根拠条文となっています。

あえて簡単に説明すると、粉飾を是正する更正の請求は
原則として即時還付されず将来充当になるわけですが、
例外として粉飾していた法人が更生・再生手続/特別清算
などの手続きが開始された場合、将来充当ができないので
1年以内の提出に限り即時還付するという規定になります。

ですから、粉飾を是正する更正の請求は「一般的には」、
通常使用している更正の請求書となります。

国税庁サイト「法人税及び地方法人税の確定申告
に係る税額等についての更正の請求」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_8.htm

また、粉飾を是正する更正の請求書については
区分16「仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う
控除法人税額」の欄を使用、理由欄には
「仮装経理に基づく過大申告の場合の更正の請求」
などを記載することになります。

ここまで3回にわたって、粉飾を税務上是正する方法
=更正の請求について解説してきました。

税理士・会計事務所としては、顧問先の粉飾自体が
頭の痛い問題ですが、それ以上に悩みが大きいのは
是正方法であって、この処理を間違うと税務調査で
逆粉飾=脱税=重加算税など、より大きな問題と
なり得るので、ぜひ注意してください。

来週水曜の本メルマガでは、本題であった
重加算税に論点を戻してさらに解説していきます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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