裁決よりも判決が反論根拠として強いわけ
※2019年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回・前々回において
裁決(事例)の反証力・拘束力について
解説してきましたが、今回はシリーズ最終回で、
判決と裁決を全体的に解説します。
税務実務においては、裁決のみならず
(裁判所の)判決内容を参考にすることもあり、
これも当然で、判決にも拘束力(先例性)が
あると認められているからです。
判決の法的効果については、下記の法律で
以下のように定められています。
行政事件訴訟法第33条第1項
処分又は裁決を取り消す判決は、その事件
について、処分又は裁決をした行政庁
その他の関係行政庁を拘束する。
これは「取消判決の拘束力」というもので、
判決主文が導き出されるのに必要な事実認定
及び法律判断にわたるものであるから、
取消判決確定後の再度の審判手続において
取消判決の認定判断に抵触する認定判断を
することは許されないとされています
(最高裁平成4年4月28日第三小法廷判決)。
これも考えてみれば当たり前で、裁決より後に
判断された判決が、裁決の判断を覆す場合、
判決(の方)が有効になるわけですから、
先週までの解説も加味すると下記となります。
裁決:拘束力(先例性)がある
⇒
判決:裁決をも拘束する
⇒
判決は裁決よりも拘束力(先例性)が高い
となるわけです。
このように考えていくと、判決・裁決の
拘束力・先例性は、全体として
下記の順番で高いということがわかります。
1 判例:過去の「最高裁判決」から似たような
判決事例が積み重なったもの
2 裁判例:過去の「最高裁以外の下級審
(地裁・高裁など)の判決」から、似たような
判決事例が積み重なったもの
3 判決:裁判所が「個別事案に対して」
下した判断の結果
4 公開裁決:国税不服審判所が個別事案に対して
下した判断の結果のうち、「先例性」があるもの
5 非公開裁決:上記(4)以外
これは裁決(事例)でも同じですが、税務調査の
反論根拠・材料として判決を持ち出した場合、
「判決はあくまでも個別の判断」
(似たような判決でも違う判断がある)
「前提となる事実が相違すれば結論は違う」
と調査官に反論されるケースもありますが、
だからこそ、似たような判決が積み重なった
「判例」や「裁判例」を持ち出すことが大事です。
税務調査や税務判断をする場合、
闇雲に判決・裁決事例を探すのではなく、
「判例」や「裁判例」をまず探していく
ことが大事だということがわかります。
上記の考え方は理解されていないことが多いので
ぜひ参考にしてください。
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