裁決事例を反論根拠に使う場合の順番・注意点
※2019年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回は、裁決事例も
税務調査の反証材料にはなることを
解説しましたが、今回は裁決事例の中にも
「公開裁決」と「非公開裁決」があり、
その違いについて解説していきましょう。
裁決(国税不服審判所で争った処分に対する判断)
については、その一部が国税不服審判所の
ホームページで公開されています。
これは「公表裁決事例」と定義されており、
下記にその意味合いが載せられています。
「公表裁決事例集」
http://www.kfs.go.jp/service/index.html
「納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、
税務行政の適正な運営の確保に資するとの観点から、
先例となるような裁決については、(略)
公表しています。」
「裁決事例全文の調べ方」
http://www.kfs.go.jp/annai.html
「国税不服審判所で行った裁決のうち、
法令の解釈・適用について先例性があると
認められるものなどについては、審査請求人の
正当な権利・利益が害されることのないよう
十分に配意した上で公表することとしています」
このように、裁決事例だから公表している
わけではなく、国税不服審判所が
【先例性がある】と判断した裁決事例
(のうち個人が特定できるなどを除いた事例)
を公開・公表しているのです。
一方で、(非公表の)非公開裁決であっても、
裁決書は行政文書であることから、
情報公開の対象であり誰でも開示請求することが
できますし、だからこそTAINSなどの
データベースにも載っています。また、
国税不服審判所のサイトでも(要旨だけですが)
検索対象とはなっています。
以上から裁決事例に関して、全体としての
理解は下記のようになります。
・全裁決事例は税務調査の反証材料になる
(もちろん税務判断の材料にもなる)
・裁決事例の中でも「公表裁決事例」の方が
【先例性がある】と判断されている以上、
非公開裁決よりも反証力が強い
ということです。
ですから、税務調査の反論材料として
裁決事例を探すのであれば、まず
「公表裁決事例」で検索したうえで、
該当裁決がなければ、非公開裁決を
調べるという順番が妥当だといえます。
なお、公表されていないのであまり
知られていませんが、裁決事例を公開するか
どうかの判断基準には、下記の
「事務運営指針」等がありますので、詳細な
基準を知りたい方はそちらをご覧ください
(TAINSには載っています)。
「裁決結果及び裁決要旨の公表手続
について(事務運営指針)」
(平成23年3月29日 国税不服審判所長)
「裁決結果の公表基準の取扱いについて(指示)」
(平成23年3月4日 国税不服審判所長)
「裁決結果の公表基準について(事務運営指針)」
(平成12年9月8日 国税不服審判所長)
前回も注意喚起しましたが、
裁決(事例)は反論根拠にならない、と
主張する調査官もいるのです。
しかし実際のところ、裁決事例の中には
「法令の解釈・適用について先例性があると
認められる」と判断される事例さえある
のですから、判決と同じように
知っておかなければならないことは
理解いただけるかと思います。
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