認知された子の相続権2
※2023年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、前回に引き続き
「認知された子の相続権2」です。
前回は、父からの認知に関する取扱いをまとめました。
その中でも、非嫡出子が父の「生前」に認知された場合の
取扱いを検討しました。
今回は、非嫡出子が父の「相続開始後」に認知された
場合の扱いを確認します。
検討の前に、前回の復習もかねて
以下の事例を考えてみましょう。
被相続人:父
推定相続人:長男、長女(母は既に他界)
推定相続人ではないが、
認知していない非嫡出子が1人いる。
父の相続財産:12億円(現預金のみ)
ケース1:
遺言認知(民法781(2))のみで、
遺言では遺産分割の指定なし
相続人は、長男と長女、非嫡出子の3人
であるため、3人で遺産分割協議を行う。
平成25年の民法改正により、
平成25年9月5日以後に開始した相続では
非嫡出子の相続分は嫡出子と同様と
なったため、法定相続分3分の1ずつ
主張することになります。
ケース1-2:
遺言認知(民法781(2))のみで、
遺言では認知した非嫡出子に1億円で
長男9億円、長女2億円を相続させる
相続人は、長男、長女、非嫡出子の3人
であるが、特定財産承継遺言により、
長男9億円、長女2億円、非嫡出子1億円
という遺産分割方法の指定となります。
ただし、非嫡出子の遺留分は
6分の1であるため、
遺留分侵害されており侵害額である
1億円(=12億円×1/6-1億円)
の金銭を長男へ請求することになります
(民法1046(1))。
ここで・・・
遺言認知がなく、死後認知訴訟が
提起された場合の概要を確認します。
1.死後認知訴訟が提起できる人
まず、死後認知訴訟を提起できるのは、
非嫡出子本人、その直系卑属、そして、
その法定代理人です(民法787条)。
ただし、非嫡出子が未成年者である場合には、
親権者である母や、未成年後見人が代わって
訴訟提起することができます。
―――
(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、
認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日
から三年を経過したときは、この限りでない。
―――
2.死後認知訴訟が提起できる期間
死後認知訴訟が提起できる期間は、
父の死後3年間のみとなります。
3.死後認知訴訟が提起の相手方
検察官となります(人事訴訟法12(3))。
4.死後認知訴訟で有力な証拠
DNA鑑定が有力な証拠となります。
ただし、DNA鑑定がない場合でも、
過去の経緯などを立証する証言等により
立証が可能な場合もあります。
5.死後認知訴訟の勝訴判決の法的効果
死亡した父と非嫡出子との間で
親子関係が法律上確定することになります。
これを踏まえて以下のケースを検証します。
ケース2:
遺言なしで父の相続が開始したが、
相続開始後、すぐに非嫡出子本人が認知の訴えを提起し、
判決確定時には遺産分割協議は未確定である
このケースでは、
長男、長女、非嫡出子の3人で
遺産分割協議を行うことになります。
当然、法定相続分の3分の1ずつを
主張することになることが想定されます。
ケース2-2:
遺言なしで父の相続が開始したが、
相続開始後、すぐに非嫡出子本人が認知の訴えを提起したが、
判決確定時には遺産分割協議は既に確定済みである
このケースでは、
遺産分割協議は確定しており、判決確定後に、
遺産分割協議のやり直しは求められないことになっています。
この場合、非嫡出子は、
支払請求権を行使することになります
(民法910)。
―――
(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
第九百十条 相続の開始後認知によって相続人となった者が
遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が
既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
―――
ちなみに、価額支払請求に消極財産が含まれるか
争われた裁判につき、令和元年8月27日の最高裁判決では
積極財産のみとする判断が下されました。
次回は、ケース2-1における
相続税申告での取り扱いを解説します。
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