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2025.05.14

調査官が提示する更正は不利で修正申告が有利は本当なのか?(前編)

※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

春の税務調査が全盛期となり「例年以上に調査件数が多くて
対応が大変・・・」という声が聞こえるようになりました。

さて、税務調査での否認指摘項目が多く、税理士から
反論を続けていると、調査官から提示されるのが
「修正申告しないのであれば更正となりますが、
更正であれば不利になる」という内容・条件です。

直近で実際にあった相談でも、法人の収入の一部が
役員の個人口座に入金されていた調査において、
「修正申告であれば貸付金で処理することを認めるが、
更正となると役員賞与になる」とされた事案がありました。
さらに、この調査事案では

・7年遡及(調査期間5年だと時効年分が生じる)
・重加算税
・青色取消し

などの論点もあり、調査官は各論点を持ち出しては
修正申告に誘導しようとする意図が見え隠れします。

まず、大筋での結論を伝えておくと、
【本当に】更正されるより修正申告を提出した方が
有利なのであれば修正申告に応じた方がいいです
(非常に当たり前のことを言っています)。

例えば、このまま(修正申告を出さず)更正までいくと
「A・B・Cが否認されてたうえで重加算税」となる
蓋然性が高い場合において、調査官から
「修正申告を提出するのであればCの否認指摘を
取り下げたうえで重加算税を課しません」と
言われたのであれば、応じるメリットしかありません。

調査官側から考えると、更正するのは

・税務署内の手続きなど面倒(署長の決裁など)
・時間がかかる(証拠収集や署内手続きなど)
・疑義あるグレーな項目は否認しにくい(修正申告で
あれば納税者が納得しているので問題にならない)

などの内情から、修正申告の方が納税者に有利
という提案(譲歩)は、実際にあり得るわけです。

一方で、上記事案のように、そもそも
「7年遡及」「重加算税」「青色取消し」の要件を
満たしていない、もしくは満たすかもよくわからない
場合において「修正申告であれば5年で済ませて
重加算税ナシ、青色取消ししません」と言われても、
それは更正であっても同じかもしれません。

そうなのであれば、調査官が意図的に風呂敷を大きく
広げておいて、各項目を取り下げるように見せて
修正申告に誘導しているだけということになります。

今回のメルマガで知っておいていただきたいのは、
「修正申告であれば5年だが更正であれば7年」等、
税務調査において調査官からの修正申告の勧奨に
応じなければ、更正において不利になるというのは
法律的にありません(現実にあれば違法行為です)。

行政手続法第32条(行政指導の一般原則)第2項
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に
従わなかったことを理由として、
不利益な取扱いをしてはならない。

この法律規定を、修正申告と更正に置き換えると、

【調査官は、納税者が修正申告の勧奨に応じなかった
ことを理由として、(修正申告よりも)
不利益になる更正をしてはならない】

となります。この点は、国税庁のFAQでも
明記されていますので、併せて参考にしてください。

「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
問25 調査結果の内容説明を受けた後、
調査担当者から修正申告を行うよう勧奨
されましたが、勧奨には応じなければ
いけませんか。また、勧奨に応じないために
不利な取扱いを受けることはないのでしょうか。
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm#a25

さて、来週水曜の本メルマガでは、上記を
もう少し深堀りして、税務調査における
修正申告と更正の違いについて解説していきます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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