調査官が提示する更正は不利で修正申告が有利は本当なのか?(中編)
※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガでは、税務調査において
修正申告(の勧奨)より更正の方が不利になることは
法律(行政手続法)から無いことを解説しました。
調査官があたかも「更正の方が不利になる」
(増差税額が増える・7年遡及・重加算税・青色取消し等)と
主張するのは、修正申告への誘導を意図することが多いです。
さて、今回のメルマガでは、税務調査における
修正申告と更正の違いについて解説をします。
まず、各行為の条文確認です(カッコ書きを除く)。
国税通則法第19条(修正申告)
納税申告書を提出した者は、(中略)
その申告について第二十四条(更正)の規定による更正が
あるまでは、その申告に係る課税標準等又は税額等を
修正する納税申告書を税務署長に提出することができる。
国税通則法第24条(更正)
税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、
その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の
計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、
その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと
異なるときは、その調査により、当該申告書に係る
課税標準等又は税額等を更正する。
このように、修正申告は自ら(誤りを認めて)提出する、
一方で、更正は税務署(長)からの処分となります。
さらに、税務調査における更正と修正申告については
下記のように規定されています。
国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)
2 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと
認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、
その調査結果の内容を説明するものとする。
3 前項の規定による説明をする場合において、
当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は
期限後申告を勧奨することができる。(以下、略)
この規定を簡単に表現すると、税務調査において誤りが
あった場合、調査官は【まず更正する内容を説明するが、
納税者が自ら誤りを認めるのであれば(その説明内容で)
修正申告してもいいですよ(勧奨)とする】ものです。
このことからも理解できるとおり、税務調査の結末が
修正申告であろうと更正であろうと、その結果
(増差税額・課税期間のみならず重加算税なども含む)
は変わらず、その説明内容に納税者が
・納得しない/できない=更正
・納得した=修正申告
という違いだけであって、そもそも
「修正申告すれば増差税額が少なく済むが、更正となると
増差税額が増えて重加算税」などの違いは生じないのです
(法律の解釈であって現実は違うから困るわけですが)。
さて、上記では「更正は税務署(長)からの処分」
と解説しましたが、処分ではない修正申告との違いは、
【不服申立てができるか】どうかです。
国税通則法第75条
国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げる
ものに不服がある者は、当該各号に定める
不服申立てをすることができる。
一 税務署長、国税局長又は税関長がした処分
この点、更正=処分なので納税者に何か不利益があると
思い込んでいる税理士も多いのですが、上記のとおり、
●更正だから税額が増える論理はない
●更正だから課税期間が延びるわけではない
●更正だから重加算税になるのではない
●むしろ更正の方が不服申立てする権利を得られる
(実際に不服申立てをするかどうかはその後の判断)
ということになります。
今回は修正申告と更正の違いについて「法的に」
解説しましたが、来週水曜の本メルマガでは
「実務上の違い」について取り上げましょう。
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