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2025.05.14

調査官が提示する更正は不利で修正申告が有利は本当なのか?(後編)

※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガでは、税務調査の結末としての
修正申告と更正について「法的な違い」を取り上げましたが、
今回は「実務上の違い」について解説します。

まず、修正申告をしない=更正となると、
税務調査が【長引く】ことは覚悟する必要があります。

調査官側から考えると、修正申告であれば
納税者が自身の非違事項を認めて提出するものですので、
その事実認定もしくは法令解釈を厳密に
突き詰める必要性はありませんが、一方で更正となると
税務署からの処分であり、不服申立て~税務訴訟まで
想定しなければなりませんので、課税処分するにあたり
特に資料等の課税根拠を厳密に求められることになり、
税務調査が長引くことがほとんどです。

これに付随して、否認項目が対外的な取引である場合、
修正申告であれば実施されなかったであろう【反面調査】
が実施される、否認項目が社内的な事項である場合、
従業員へのヒアリング等が実施されることも多いです。

修正申告と更正の実務上の違いで最も大きいのは、
【交渉・バーター】ができなくなるという点でしょう。

修正申告を予定してる場合、調査現場でよくある
「否認指摘のAとBは修正申告に応じますから、
Cはもういいでしょう(指摘を取り下げてください)」
は、更正となると通じません。

繰り返しますが、更正は税務署からの処分である以上、
更正する=課税するか/しないかの完全な二択であり、
修正申告のようなグレーな決着(落としどころを探る)
ような交渉・バーターはできなくなります。

しかし、現実的には修正申告をしない=更正を選ぶ
ことによって納税者有利になるケースも多くあります。

否認指摘されたA・B・Cの項目について、
税務調査内で調査官が強硬的な態度だったにもかかわらず、
更正となるとA・Bのみで課税となり、Cは
課税されないというようなケースです。

これは上述のとおり、更正(=処分)においては
事実認定もしくは法令解釈が厳密に求められるため、
担当調査官がいかに強気に言っていたとしても、
税務署内の審理もしくは副署長・署長での検討・決裁
において、根拠が弱い項目は課税しないという
判断される場合も多いからです。

最後となりますが・・・調査官から持ち掛けられる
重加算税のバーターには注意が必要となります。

税務調査においてA・B・Cの否認指摘があり、
納税者側として「納得できないので更正してください」
と強気に対応した場合、調査官から

●Cの否認指摘を取り下げる(AとBは否認)
●その代わりにAの非違項目については重加算税を課す
●全体としての追徴税額(増差税額+加算税)は下がる

というような提案(バーター)です。

顧問・関与先が「支払う金額=追徴税額が下がる」
ことを最優先するのであれば、あえて調査官からの
この提案を飲むというのはもちろんアリなのですが、
実際には重加算税を賦課されることについて
将来的な不利益も生じますので、その事前説明は
顧問税理士として必要となります。
詳細は下記の私の記事をご覧ください。

「重加算税を受け入れるかどうかは顧問先の判断」
https://kachiel.jp/?p=40972

ここまで全3回にわたって、税務調査における
修正申告と更正の違いについて多面的に
解説してきましたが、まず法的な理解が大前提となり、
そのうえで実務・現実的な対応が求められますので、
ぜひ全体を理解していただければと思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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