調査官のコピー持ち帰りは断れるのか?
※2019年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税務調査を受けるにあたっては、どこまで義務があり、
どこから断ることができるのかを理解することが
重要になるわけですが、今回は判断に迷いがちな
「提出」と「留置き」の区分について解説します。
よくある質問は「調査で資料をコピーして渡した場合、
調査官が持って帰るのを拒否することはできますか?」
というものです。
まず、下記の条文規定から、税務調査において
「提出」は【義務】であることがわかります。
国税通則法第74条の2(一部抜粋)
その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を
検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の
提示若しくは提出を求めることができる。
次に「留置き」が納税者の【任意】であることは、
下記をお読みください。
「留置きの現実」
http://kachiel.jp/blog/%E7%95%99%E7%BD%AE%E3%81%8D%E3%81%AE%E7%8F%BE%E5%AE%9F/
ここでいったん区分を整理すると、
「提示・提出」=断れません
「留置き」=断ることができる
と理解することになります。
ここで、上記質問にある「調査で渡したコピーは
どうなるのか?」=「提出 or 留置き」ですが、
国税庁サイトには下記とあります。
税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm#a04
問4 提出される物件が、調査の過程で
調査担当者に提出するために新たに作成された
写しである場合には、留置きには当たらない
とのことですが、自己の事業の用に供するために
調査前から所有している物件が写しである場合
(取引書類の写しなど)であっても、
留置きには当たらないのでしょうか。
(答)
調査の過程で調査担当者に提出するために
新たに作成した帳簿書類等の写し(コピー)の提出を
受けても留置きには当たらないこととしているのは、
通常、そのような写し(コピー)は返還を予定しない
ものであるためです。他方、納税者の方が
事業の用に供するために保有している帳簿書類等の写し
(コピー)をお預かりする場合は、返還を
予定しないものとは言えませんから、
留置きの手続によりお預かりすることとなります。
以上のように、返還を予定されている、
例えば原資資料や帳簿などを調査官が
持ち帰る行為は「留置き」に該当しますので、
納税者の任意(=拒否できる)となりますが、
一方で、調査中にとったコピーについては
返還しないので「提出」に該当することにあり、
持ち帰りを拒否することはできません。
返還を予定している(原本)かどうかで
判断することになりますので、納税者の手元に
コピーしかない場合はそれが原本になり、
上記FAQのように、原本であるコピーを
持ち帰るのは「留置き」、そのコピーのコピーを
とれば「提出」となるということです。
極端なことを言えば、帳簿の持帰り(留置き)を
拒否し、調査官がすべての帳簿をコピーした場合、
拒否することはできないということです。
「提出」という言葉の意味合いと「留置き」は
混同しやすいのですが、通達には「意義」が
定められていますから、理解したい方は
ぜひ通達も併せて読むようにしてください。
国税通則法第7章の2(国税の調査)
関係通達の制定について(法令解釈通達)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/index.htm
「1-6」と「2-1」