贈与税の配偶者控除に関する入口論点
※2024年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
今回のテーマは、
「贈与税の配偶者控除に関する入口論点」です。
前回の内容は
みなし贈与(相法5)に基づく住宅取得等資金贈与の検証
として、みなし贈与課税がされる満期保険金を
もって、住宅取得等資金に充当した場合に
適用要件を満たすのかを検証しました。
つまり、入口が入れるのか?
というイメージの論点です。
今回も前回と同様、入口論点を2つ検証します。
ただし、今回は
「贈与税の配偶者控除(相法21の6)」で
検証します。
検証の前に、
贈与税の配偶者控除(相法21の6)
の適用要件を確認します。
1.夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に
贈与が行われたこと
2.配偶者から贈与された財産が、
居住用不動産であること、又は
居住用不動産を取得するための金銭であること
3.贈与を受けた年の翌年3月15日までに、
贈与により取得した居住用不動産又は
贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、
贈与を受けた者が現実に住んでおり、
その後も引き続き住む見込みであること
上記2につき、
居住用不動産を取得するための金銭
を贈与することで要件を満たすケースがあります。
■検証1
前回のメルマガと同様、以下の契約形態で
満期保険金を配偶者が受け取れば、
配偶者には、みなし贈与(相法5)が
課されることになります。
契約者(保険料負担者):父
被保険者:父
保険金受取人:配偶者(満期・死亡)
保険金:2,000万円(満期・死亡)
配偶者が受け取った満期保険金2,000万円で
居住用不動産を購入した場合、
贈与税の配偶者控除は認められるのでしょうか。
結論としては・・・
前回同様、要件を満たすと考えます。
根拠1:
条文上、居住用不動産の取得対価に充てる
ための金銭を贈与により取得した場合からは、
みなし贈与(相法5)は除外されていない。
根拠2:
贈与により取得したとみなされる保険金
としての実質は、金銭の贈与を受けた場合
と何ら変わるところがない。
■検証2
実務上、あまり想定できないケースですが、
以下をご確認ください。
夫は所有する居住用不動産3,000万円(時価)を
妻に1,000万円で譲渡しました。
妻には、十分資力があり、
売買代金支払いの事実が認められるとします。
上記につき、妻は低額譲受け部分の
2,000万円のみなし贈与(相法7)につき、
贈与税の配偶者控除の適用が可能でしょうか。
結論としては・・・
検証1と同様、要件を満たすと考えます。
根拠:
低額譲受けにより贈与によって
取得したとみなされるのは、
上記の差額相当額の経済的利益であり、
土地等や家屋等の不動産そのものではないが、
実質的には、その差額相当額の不動産の贈与を
受けたのと変わりはないと考えられます。
条文上、否定されていなければ、
最後は経済的実質で考えていくことになります。
実務上、ふと疑問に思ったことは
条文で検証をし、回答を導くことで
応用問題にも対応できるようになります。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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