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2025.05.14

配偶者居住権を設定してはいけない場面

※2024年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下勇人です。

今回のテーマは、
「配偶者居住権を設定してはいけない場面」です。

先日、カチエルでの資産税研究会(実践編)
にて、配偶者居住権を取り上げましたので、
久しぶりに取り上げてみたいと思います。

配偶者居住権は節税対策の手段としても
有効であることは多くの方がご存知かと思います。

その理屈としては、
一次相続で配偶者居住権を設定し、
二次相続で配偶者居住権が消滅することによる
節税にあるかと思います。

この考え方として、
相続税法基本通達9-13の2(注)に
課税庁側の法令解釈として記載されています。

9―13の2 配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を
取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている
建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による
配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は
民法第1032条第4項((建物所有者による消滅の意思表示))の
規定により消滅した場合において、当該建物の所有者又は
当該建物の敷地の用に供される土地
(土地の上に存する権利を含む。)の所有者
(以下9―13の2において「建物等所有者」という。)が、
対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、
原則として、当該建物等所有者が、その消滅直前に、
当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は
当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に
相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、
当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。
(令元課資2-10追加)

(注) 民法第1036条((使用貸借及び賃貸借の規定の準用))において
準用する同法第597条第1項及び第3項((期間満了及び
借主の死亡による使用貸借の終了))並びに第616条の2
((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により
配偶者居住権が消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する。

通達本文で規定しているのは、
・配偶者居住権の合意解除
・配偶者居住権の放棄
・用法違反による契約解除
によって、配偶者居住権が消滅した場合には
贈与税が課税されると
課税庁側は解釈しています。

ただし、注書きでは、
・配偶者居住権の期間満了
・配偶者の死亡
・建物全部滅失等
によって、配偶者居住権が消滅した場合には
贈与税が課税されないと
課税庁側は解釈しています。

課税上の取扱いを知り
それを実務に活かすためには
配偶者居住権を設定する際の
出口(消滅事由)を
検討しておくことが必要です。

つまり・・・
一次相続時に配偶者居住権を設定し
二次相続発生前に贈与税が課税される
消滅事由に該当しないかを
配偶者居住権の設定時に検証しておく
必要があります。

将来リスクですので、
確実に発生するとは言えませんが、
それでも起こり得る可能性を
考えておくことはクライアントへの
サービス提供という意味では
必須になると考えます。

具体的に注意すべきは
(1)自宅の建替え
(2)自宅の譲渡
になります。

一次相続後に(1)(2)の
どちらかの可能性がある場合には
贈与課税されてしまう可能性が高くなります。

(1)自宅の建替え
同居親族がいれば、
二次相続後の可能性が高いような気がしますが
それでも、二次相続前でも可能性がない
とは言い切れませんので、設定時には
確認が必須となります。

(2)自宅の譲渡
これは、(1)よりも可能性は高いように感じます。
例えば、父母で実家に居住しており、
父の相続発生後、配偶者居住権を設定し
自宅に居住していた母が、老人ホーム入居にあたり
自宅を売却することを想定してみてください。

配偶者居住権は譲渡することができない
(民法1032(2))ため、共同売却のように
放棄してから所有権者(長男など)から
対価を得るのであれば、
総合譲渡課税(措通31・32共-1)と
なるばかりか、居住用財産の譲渡特例
(3,000万円控除)も使うことができません。

このような事態が事前に想定できる場合には
配偶者居住権の設定はしない、という選択を
すべきと考えます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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