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2019.11.01

重加算税が取り消された事例(その2)

※2018年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「重加算税が取り消された事例(その2)」ですが、

平成30年1月30日の裁決をご紹介します。

今回は「税理士交付用として相続財産の一覧表を作成した行為は

隠ぺい又は仮装の行為に当たらないとして、

重加算税の賦課決定処分を取り消した事例」(国税不服審判所の

ホームページより)です。

今回の裁決は私が発行しているメルマガでも取り上げたものですが、

本メルマガでも専門家向けに修正した上で取り上げます。

まずは、この事例の前提条件を時系列で並べます。

●が無申告だったものとなります。

〇 平成26年5月〇日:相続開始(相続人は子1人のみ)

● 平成26年8月21日:生命保険金1がA銀行に入金

→ 金額:5,045,654円

〇 平成26年9月5日:生命保険金2がB銀行に入金

→ 金額:581,308円

〇 平成26年9月5日:生命保険金3がB銀行に入金

→ 金額:75,000円

● 平成26年9月11日:生命保険金4がB銀行に入金

→ 金額:3,001,184円

〇 平成26年9月12日:生命保険金5がB銀行に入金

→ 金額:10,029,577円

● 平成26年9月25日:年金信託から遺族一時金がB銀行に入金

→ 金額:5,000,161円

〇 平成27年3月頃:税理士に申告書の作成依頼

→ 申告期限は平成27年3月〇日なので、申告期限前後

→ 税理士に提出した書類は下記

・ 預貯金等の残高証明書

・ 生命保険金2、3の支払明細書等

・ 相続人が作成した相続財産の一覧表※

※ この一覧表を税理士が精査し、外貨預金(5,566,514円)、

投資信託35,016,364円)が漏れていたので、

税理士が一覧表を手書きで修正

〇 平成27年4月11日:相続税の期限後申告

→ 相続財産として記載された財産は下記。

・ 税理士が修正した後の相続財産の一覧表(以後、「旧一覧表」という)

の財産

・ 生命保険金2、3、5(1、4は記載されず)

・ 遺族一時金も記載されていない。

〇 平成28年10月20日:税務調査官、相続人、税理士が面談

〇 平成28年12月2日:重加算税の賦課の決定処分

この事例において、下記の事実関係があります。

〇 税務調査官との面談の際、相続人は「新しい」相続財産の一覧表

(以後、「新一覧表」という)を作成し、持っていった。

〇 ここに、遺族一時金5,000,161円は記載されていたが、

生命保険金1、4は記載されていなかった。

この状況の下、生命保険金1、4、遺族一時金が

申告書に記載されていないのは「隠ぺい」だと国税は主張し、

これに関して、争いになった訳です。

そして、国税不服審判所は下記と判断しました。

〇請求人は、自ら手続を行って本件各無申告保険金

及び本件遺族一時金の支払を受け、これらの存在及び金額を

認識していたものと認められ、また、それらの合計額は13,046,999円であって、

本件申告書に記載された各保険金(生命保険金2、4、5)の合計額が

10,685,885円であることと比較しても高額である。

〇本件各無申告保険金及び本件遺族一時金は、請求人が日常的に

使用していたA銀行口座及びB銀行口座に、本件申告書に記載された

各保険金と同時期に入金されたものであることからすれば、

本件各無申告保険金及び本件遺族一時金は、本件相続税の申告を行う上で

失念しやすい相続財産ではなかったといえる。

〇他方、本件各無申告保険金及び本件遺族一時金が振り込まれた

A銀行口座及びB銀行口座座は、いずれも本件相続の開始前から

請求人が日常的に使用していた口座であることに加え、

A銀行口座には、本件申告書において申告された生命保険金2、3、5も

振り込まれている。

〇B銀行口座には、本件相続により請求人が承継した本件被相続人名義の

定額貯金が振り替えられていることからすれば、これらの口座は、

原処分庁においてその存在を容易に把握し得るものということができる。

〇請求人は、税務調査時において、本件遺族一時金の記載のある

新一覧表を特に躊躇することもなく本件調査担当職員に

提示したことのほか、本件遺族一時金の支払に関する書類についても

同職員に提示するなど、税務調査に協力的な姿勢を示していたことが

認められる。

〇請求人は、旧一覧表に本件遺族一時金の記載がない理由について、

上書入力を繰り返し行ったため消えてしまった旨の説明をしているところ、

この説明は上記の請求人の態度等に照らして不自然ではなく、

一応合理的であるといえる。

〇請求人が、本件相続に係る相続財産を正確に把握していたにもかかわらず、

あえて本件各無申告保険金及び本件遺族一時金を記載せずに

旧一覧表を作成したとの事実を推認することはできず、

ほかにこの事実を認めるに足りる証拠はない。

〇請求人が旧一覧表を作成した行為は、本件各無申告保険金

及び本件遺族一時金の存在を隠匿したとか、故意にわい曲したものと

評価することはできず、通則法第68条第2項に規定する

隠ぺい又は仮装の行為に当たらないといわざるを得ない。

いかがでしょうか?

相続税の申告は一般の方を対象にするために、

色々なことが起きます。

なぜ、税理士は相続人の通帳を確認しなかったのだろう?

という疑問もあります。

この事例は単純な確認行為をしなかったが故に、

ここまでもめた事例となった訳です。

生命保険金の額から考えると、

それほど大きな相続財産ではなかったとも思われます。

しかし、そういう相続でも税務調査があり、

「防げる単純ミス」により、国税不服審判所まで争ったということは

覚えておいてください。

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