重加算税を体系的に理解する(調査前の修正申告)
※2024年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガを初回として「重加算税」に関する
連載を開始しましたが、今回は「税務調査の開始前に
修正申告を提出した場合に重加算税が課されるか?」
について解説します。
まず結論ですが、【税務調査の初日(開始)より前に
提出した修正申告について重加算税は課されません】。
もちろんこれは、当初申告において売上除外や
架空外注費など明らかな隠蔽・仮装行為があった場合でも、
調査前に修正申告すれば重加算税は課されないものです。
この「調査前」なる時期を、税務調査が全く影響しない
「事前通知前」と、「事前通知後~調査初日前」に
分けて解説することも可能なのですが、長くなるわりには
結論は同じ=どちらも重加算税は課されない、となるので
ここでは総じて解説することにします。
重加算税を規定する法律には下記とあります(一部略)。
国税通則法第68条第1項
第65条第1項の規定に該当する場合(修正申告書の
提出が、その申告に係る国税についての調査があつた
ことにより当該国税について更正があるべきことを
予知してされたものでない場合を除く。)において(略)
当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を
乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
つまり、このカッコ書きに該当する場合は
重加算税を課さないという規定になっているわけです。
ここにいう、いわゆる「更正の予知がない」
修正申告がいつの時点を指すのかに関しては解釈論が
多いのですが、ここでは原則論を明示しておきます。
「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の
取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_01/00.htm
第1 1(注)
臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が
提出された場合には、原則として「更正があるべき
ことを予知してされたもの」に該当しない。
上記の事務運営指針規定において、事前通知(調査通知)後
であっても調査が開始されていない(臨場がない)段階での
修正申告は「更正の予知に該当しない」とされています。
このことから、【調査開始前に提出した修正申告は、
更正の予知に該当しない=重加算税が課されない】
という結論になるわけです。
なお、更正の予知と加算税の関係についてさらに知りたい方は
下記記事(過去メルマガ)を参照してください。
「修正申告に加算税が課される・課されないの分岐点8」
https://kachiel.jp/?p=38792
この結論から何を言いたいのかというと、
税務調査の事前通知があってから、調査が開始される
(決定した調査初日)までの間に顧問先(納税者)に対し、
「収入を隠すなど何か悪いことはやってないですか?」
「今のうち(調査前)に本当のことを言ってくれれば
重加算税は課されませんよ」
と伝えることが大事ということです。
私はよく喧伝されているような税務調査(事前)対策
というのはほとんど意味がないと考えている一方で、
事前通知後~調査前において絶対に確認すべき事項は、
顧問先(納税者)が税理士・会計事務所に隠している
事実関係や不正行為だとも考えています。
税務調査で顧問税理士が知らなかった事実が発覚した場合、
信頼関係が崩れることはもちろん、顧問先(納税者)も
重加算税を賦課されるデメリットが大きいわけです。
「重加算税が賦課される4つのデメリット」
https://kachiel.jp/?p=16202
税務調査を機に信頼関係が崩れてしまうくらいであれば、
「今なら救えます」と伝え、たとえ不正行為が
発覚したとしても、事前に修正申告することで、
むしろ信頼関係が強化されるものと考えます。
調査前の不正確認をしない税理士・会計事務所も多い
と思いますので、今後はぜひ実践してください。
さて、来週水曜の本メルマガでは、重加算税の
賦課基準を定める事務運営指針について解説します。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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