重加算税を体系的に理解する(賦課決定を理解する)
※2024年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週水曜の本メルマガでは連載で「重加算税」について
解説していますが、今回は重加算税が賦課決定(処分)
であることから気を付けるべき点を取り上げます。
根本的に勘違いしている方も多い論点なのですが、
税務調査において非違があった場合、
●修正申告(の勧奨):増差所得・税額を自ら是正する行為
=
調査官の指摘に対して納得して修正申告書を提出する
ことから、その内容については不服申立て等で争えない
●重加算税:国税(税務署)による賦課決定
=
処分であることから不服申立て等で争うことができる
ここで「修正申告を提出した=不服申立てできない」
とだけ理解している方が多いのですが、これは
本税に関しては争えないものの、重加算税に関しては
別途で不服申立て等が可能となります。
ただし、ここで現実的な問題点があります。
税務調査内で調査官が重加算税に触れていない
(納税者としては過少申告加算税だと認識していた)
にもかかわらず、調査結了=修正申告提出後に
重加算税の賦課決定通知書が届くケースです。
下記事務運営指針の規定において、調査官は
税務調査内において否認項目・本税のみならず
加算税に関しても事前の説明義務があるのですが、
実際のところ、重加算税の説明がないまま
賦課決定されてしまう調査事案が散見されます。
「調査手続の実施に当たっての基本的な
考え方等について(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/120912/index.htm
第2章 4 (2)調査結果の内容の説明等
調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある
場合には、法第74条の11第2項に基づき、納税義務者に対し、
当該非違の内容等(税目、課税期間、更正決定等をすべき
と認める金額、その理由等)について原則として口頭により
説明する。その際には、必要に応じ、非違の項目や金額を
整理した資料など参考となる資料を示すなどして、
納税義務者の理解が得られるよう十分な説明を行うとともに、
納税義務者から質問等があった場合には分かりやすく
回答するよう努める。また、併せて、納付すべき税額
及び加算税のほか、納付すべき税額によっては延滞税が
生じることを説明するとともに、当該調査結果の内容の
説明等(下記(3)に規定する修正申告等の勧奨を行う場合は、
修正申告等の勧奨及び修正申告等の法的効果の教示を含む。)
をもって原則として一連の調査手続が終了する旨を説明する。
さて、このように重加算税が賦課決定されてしまうと、
再調査の請求もしくは審査請求するしかありませんので、
税務調査対応で大事なことは下記です。
●税務調査内で重加算税の指摘を受けた場合
⇒
税務調査内で反論し切る必要があり、中途半端な
=明確な結論が出ないまま放置していると
予期しなかった重加算税を賦課される場合がある
●税務調査内で重加算税の指摘を受けなかった場合
⇒
上述のとおり、税務調査内で重加算税の指摘を
受けていないにもかかわらず、重加算税が賦課される
調査事案は実際にあります。ですから、重加算税が
賦課される可能性・リスクがあると判断した場合、
「この調査では重加算税の賦課はないですよね?」
「(修正申告提出時など)事務運営指針には加算税の
説明も必要とされていますので重加算税についても
説明してください」と自ら確認すること
なお、税務調査の結了時に重加算税の説明を
受けていないにもかかわらず、結果として
重加算税の賦課決定を受けた場合、調査手続き違反
・不備(国税通則法第74条の11第2項および
事務運営指針違反)と主張することも可能でしょう。
ただ、現実的に考えて、重加算税を賦課された後で
調査手続き違反を問おうても、これによって
重加算税自体が取消される可能性は低いでしょう。
手続き違反だけで課税処分が取消される難しさは、
下記の公開裁決事例などを読むと理解できるはずです。
「調査結果の説明に瑕疵があったとしても、
原処分の取消事由とはならないとした事例」
(平成27年5月26日裁決事例)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/99/03/index.html
繰り返しますが、重加算税は賦課決定を受けたら
不服申立ての手続きでなければ取消しできませんので、
税務調査内でいかに終わらせるかが重要なのです。
さて、来週水曜の本メルマガでは、重加算税の
要件である「隠蔽または仮装」の事実認定ポイントを
整理して解説していきます。
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