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2025.05.13

重加算税を体系的に理解する(通謀による期ズレ)

※2024年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

毎週水曜の本メルマガでは連載で「重加算税」について
解説していますが、今回は事務運営指針に明記されている
重加算税に【該当しない】ケースについてです。

前回は、重加算税を規定する「事務運営指針とは何か?」
について解説したわけですが、その事務運営指針の内容から
法人調査において重要な反論根拠を取り上げます。

まず、事務運営指針には(条件付きで)期ズレは
重加算税にならないと規定されています。

「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm
第1 3(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合)
次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は
証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等
でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。
(1) 売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合
において、その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に
計上されていることが確認されたとき。
(2) 経費(原価に算入される費用を含む。)の
繰上計上をしている場合において、その経費が
その翌事業年度に支出されたことが確認されたとき。

さて、今期に多額の利益が計上されると認識した
経営者が、取引先(仕入先や発注先)に対して
請求書の日付を前倒した期末日にしてもらい、
当期の経費に繰上計上した場合はどうなるのでしょうか。

上記の事務運営指針においては、
「相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿
若しくは改ざんによるもの等でないときは」
期ズレが重加算税にならないと規定しているのであって
逆に言えばこれらに該当するのであれば、
期ズレであっても重加算税になり得るという規定です。

特に、実務上頻出するのは「相手方との通謀」によって
請求書の日付を変える(前倒しする)という行為ですが
この論点に関して興味深い公開裁決事例があります。

「出張日の記載のない請求書に基づいて計上した
旅行費用について、事実の仮装は認められないとした事例」
(平成25年7月12日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/92/04/index.html

この裁決事例において、重加算税の対象となった
期ズレ(経費の繰上計上)は下記の3点です。

・工場の屋根工事に関する修繕費用
・OA機器等の設置費用(機器の納品は翌期)
・海外出張旅費(出張日程は全て翌期)

各論点における前提事実、およびその事実認定は
バラバラではありますが、総じて

事実の隠ぺい又は仮装の行為があったとの
認定はできない

「当初から所得を過少に申告することを意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」
と認めることはできない

として、重加算税が取り消されています。

また、似た論点を争った別の公開裁決事例も
参考になるかと思います。

「課税仕入れに係る支払対価の額に翌課税期間に
納品されたパンフレット等の制作費を含めたこと
について、隠ぺい仮装の行為はないとした事例」
(平成25年9月26日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/92/05/index.html

この裁決事例では、期末に発注・翌期に納品された
パンフレットの消費税について、取引先と通謀した
として重加算税が課された事案ですが、結果として
重加算税が取り消されています。

本裁決事例については、以前本メルマガで
私が解説したことがありますので、詳細を知りたい方は
下記の記事を参考にしてください。

「期末の前倒経費計上は重加算税か?」
https://kachiel.jp/?p=9441

単純な期ズレで重加算税だと指摘してくる調査官は
少ないと思いますが、一方で相手方との通謀により
請求書等の日付を変える行為があった場合、
重加算税と指摘されるケースが多いでしょう。

相手方との通謀があったかどうかは、あくまでも
事実認定によるものであり、その評価は
調査事案ごとに相違するとは思いますが、上記の
公開裁決事例はこの論点で参考になることでしょう。

今回のメルマガは、通謀による期ズレ(主に
経費の繰上計上)が重加算税になるのかについて
解説しましたが、来週水曜の本メルマガでは
勘定科目誤りによる重加算税を解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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