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2018.09.04

65万円控除の要件「正規の簿記」とは何か?

※2018年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。

前回も一部触れましたが、
今回は青色申告特別控除65万円の要件とされている、
「正規の簿記」(の原則)について解説します。

個人の確定申告を処理するうえでも、
会計事務所がソフトなどで処理する分はさておき、
顧問先が自身でつけている出納帳などを見ると、
「これって本当に65万円控除できるの?」
と不安になってしまうケースもあるかと思います。

さて、「正規の簿記」とは、
所得税法施行規則第57条第1項で、

「資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を
正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、
明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表
及び損益計算書を作成しなければならない。」

との規定に基づく記帳方法を称しています。

具体的には、複式簿記だけが要件なのではなく、
日々の継続的な記帳のみならず、決算整理を行って
BS・PLを作成できる状況にあることが要件で、
(どの帳簿と限定列挙されていませんが)
売上・仕入・現金などの標準簡易帳簿や、
売掛金・預金などの債権債務記入帳を
記帳・備え付けることが「正規の簿記」といえます。

裁決や判決を調べてみると、65万円控除を
10万円に否認された事例は非常に少ないことから、
(金額も大きくないことから)税務調査では
先週のメルマガのように適正に反論すれば
ほぼ勝てる、とは言えそうです。

ただ、実例を調べてみると、下記があります。

平成17年6月22日判決(Z255−10060)
「青色申告承認取消処分に係る裁量権の範囲の逸脱・濫用の有無」

この事案では、歯科医(個人事業主で税理士アリ)
が帳簿書類として、(1)日計表 (2)金銭出納帳
(3)総勘定元帳 (4)決算仕訳リスト (5)合計残高試算表を
提示し、65万円控除が調査で否認されています。

詳細な引用は長くなるので避けますが、

(1)日計表
・収入金額に漏れがある
・一致しない日がある

(2)金銭出納帳
支払のみの記載で収入と差額の記載は一切なし

(3)総勘定元帳
・すべての仕訳が各月末日付け
・残高がマイナスの項目がある

(4)決算仕訳リスト
元帳にはない収入項目がある

(5)合計残高試算表
残高が無理やり10万円合されている

など、これまた、なかなかにヒドい帳簿と
なっていることがわかります。
しかも、税理士が関与している事案です。

確定申告時期が多忙なのはわかりますが、
とりあえずBSを作成して添付すれば・・・
だけが65万円控除の要件ではありません。

最悪の場合、確定申告の提出時には
それでも致し方ないのですが、調査時には
やはり指摘されることになります。

また、日計表や出納帳など、顧問先自身が
つけている帳簿については、最低限の指導を
しておかないと、調査でモメる要因になります。

「正規の簿記」がどの要件なのか、
明示はできないにしても、さすがに
手を抜きすぎた帳簿は厳しいのも現実です。

ぜひ、注意しながら確定申告に臨んでください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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