2023.07.14

社長個人の口座開示を要請された場合の現実的な対応方法

※2022年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

7月に入り、税務調査の事前通知が多くなる時期です。
今回は私への質問・相談が多い、法人調査で社長個人の口座を
開示要請された場合の【現実的な対応方法】を解説します。

先日、質問・相談を受けた調査事案を紹介します。

・不動産業を営む法人に対する税務調査

・社長個人の口座に金融資産関連の入金があり、
振込の内容および明細の提出を要請された

・明らかな個人所得なので、どう対応すべきか?

まず、法的な理解ですが、法人に対する税務調査
(質問検査権の行使)ですので、原則として
社長個人の口座は調査対象にはなりません。

しかし、社長個人の口座に【法人に関連する】
入金がある可能性は否定できませんので、
調査官はこの点を疑っているわけです。

この論点に関しては、国税庁のFAQに
参考になる規定が載せられています。

「税務調査手続に関するFAQ」(一般納税者向け)
問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の
提示・提出を求められることがありますが、
対象となる帳簿書類等が私物である場合には
求めを断ることができますか。
(答)
(略)法人税の調査において、その法人の代表者
名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合に
その通帳の提示・提出を求めることは、法令上
認められた質問検査等の範囲に含まれる(略)

この「(法人の)事業関連性」が重要な
判断基準になるわけですが、上記の調査事案では

●納税者側:事業関連性がない(個人の金融所得)

●調査官側:事業関連性があるか無いかは
内容を確認してみないと判断がつかない

という水掛け論になりがちでしょう。

また、税務調査で個人通帳を見せていないにも
関わらず、個人口座に入金があったことを
調査官が知っていることから、資料せんが
あることは間違いないのでしょうし、資料せんが
調査選定の主要因になっている可能性大です。

ここで、考え得る対応方法として、
「法人の事業に関連しない入金なので、
内容に関して答える必要性がない」と
突っぱねることですが、これでは事業関連性が
無いことの説明になっていないことから、
「個人の金融資産に関する入金」とだけ説明し、
質問検査権の対象外であることを明示、
徹底して拒否することでしょう。

これはこれで、質問検査権の範囲を考えた、
法的に正しい対応かと思いますが、一方で
現実的な論点として、調査官が反面調査で
銀行もしくは振込元に行くであろうなど、
あとあと面倒なことも想定できるわけです
(特に資料せんがある場合、調査官は
その入金確認せずに引き下がりません)。

もちろん、反面調査に行かれても何ら
困らないということであればいいのですが、
どうせ個人口座を調べられるのであれば、
時間・労力の短縮も考慮して、質問検査権が
及ばないことを主張しながらも、【あえて】
個人口座を開示・説明した方がいいでしょう。

法的な理解だけで杓子定規に調査対応すると、
後になって面倒なことを招きかねない場合、
顧問先の理解を得たうえですが、上記のような
現実的な対応も考慮すべきでしょう。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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