2024.05.10

贈与に関する複眼的視点

※2023年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「贈与に関する複眼的視点」です。

贈与といえば、税理士には馴染みの深い
テーマかと思います。

節税対策としての手段として
昔から頻繁に用いられてきました。

つまり、贈与者側の財産を減らすことで
相続税対策を行うというものです。

税理士が考える贈与の主体は
あくまで贈与税と考えがちです。

しかしながら、税法から考えるのでなく
民法から考えるのが本来あるべき姿
と考えます。

なぜならば・・・
民法上の贈与契約が成立して初めて
贈与税の課税関係が生じるからです。
(みなし贈与の議論は除きます)

民法上の贈与契約は、
以下と規定されています。

—(民法549条)
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える
意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

要件事実1:
贈与者が財産を無償で与える意思表示

要件事実2:
受贈者が1を受諾する意思表示

■要件事実1で注意すべき事項
贈与者側が認知症(重度)であった場合、
意思無能力となり、贈与の意思表示が
できないため、契約は無効となります。

■要件事実2
受贈するという意思表示がなされているか?
つまり、名義財産の認定の問題が生じます。

税務調査での最大の関心事である
名義預金の調査の発端は、贈与契約が
成立しているか否かが問われることになります。

そのため、民法上の贈与契約が成立している
ことを課税庁側にも立証できれば、
名義預金の認定がなされることはない、
ということになります。

その意味で、税理士が民法を学び
贈与契約を成立させることが課税庁側への
立証に繋がるというスタンスを堅持する
ことが大切になると考えます。

■贈与契約書の作成は必須か?
民法上、贈与契約は口頭ベースでも
成立します(民法549条)。

しかしながら、
贈与契約書があれば、課税庁側への立証は
格段にしやすくなるのは間違いありません。

そのうえで、確定日付を取得しておき
贈与契約書における贈与日の証拠力を
あげておくことも必須と考えます。

贈与契約書を作成するのは、課税庁対策に
限った話だけではありません。

相続人内部での紛争防止にも寄与する
ことになります。

例えば、父が生前に長男(同居)に110万円
ずつを贈与していたことを、長女(別居)は
知らなった場合、贈与契約書の有無次第では
紛争を引き起こす可能性もあります。
もちろん、贈与契約書に確定日付があれば
証拠としては尚よいことになります。
(前提:贈与者に意思能力あり)

親族間の紛争防止という
民法的視点でも、贈与契約書はあった方が
望ましいことがわかります。

税理士にとって、贈与を税務のみならず
法務の側面からも検証を重ねることは
今後必須になると革新しています。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。