相続時精算課税制度選択後の申告漏れに関する取扱い
※2023年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、
「相続時精算課税制度選択後の
申告漏れに関する取扱い」です。
令和5年度税制改正における
目玉の1つとして
「相続時精算課税制度の見直し」
があります。
令和6年1月1日以降の贈与につき
改正法が施行されることになりますが、
今回は、改正前後でも重要になる
テーマを取り上げます。
例:
平成26年1月10日、父(70歳)が
長男(40歳)に、預金2,200万円を贈与し
平成26年度の確定申告の際、
贈与税申告書に相続時精算課税選択届出書を
添付して提出した。
特別控除額2,500万円のうち
2,200万円を充当し、納税はゼロであった。
特別控除額の残りは300万円となっている。
平成27年1月10日、父は長男へ
預金300万円を贈与したが、
特別控除額300万円の枠が残っており
勝手に充当されると勘違いし、
平成27年度の贈与税申告をしなかった。
1.贈与税の期限後申告
相続時精算課税制度における特別控除は
期限内申告書に控除を受ける金額その他
必要事項の記載がある場合に限り
適用可能である(相法21の12(2))。
そのため、期限内申告をしていなければ、
特別控除の適用を受けることができない。
したがって、平成27年の預金300万円
の贈与につき期限後申告をした場合、
特別控除の適用を受けることはできず、
60万円(300万円×20%)の本税、無申告加算税、
延滞税の負担が生じることになる。
参照URL:国税庁 質疑応答事例
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/16a/10.htm
2.期限後申告をしなかった場合における相続税申告
相続時精算課税の選択後に特定贈与者からの
贈与があった場合、特定贈与者の死亡に係る
相続税申告においては、「贈与税の申告の有無
にかかわらず」、相続時精算課税適用者の
相続税の課税価格に算入される
(相法21の15(1)、21の16(1)、相基通21の15(1))。
参照URL:国税庁 質疑応答事例
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/16a/13.htm
つまり、令和6年1月1日から
相続時精算課税制度の利用が促進される
ことが予想されますが、
相続時精算課税制度の選択後は
贈与税の時効(6年)は成立することはなく、
申告の有無にかかわらず相続時に精算される
ことになります。
その意味で、相続時精算課税制度は
贈与税の時効をストップさせる制度とも
言いかえることができます。
そのため、相続時精算課税制度の選択
については、慎重な判断が求められると考えます。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
著者情報