2023.09.29

取引先(法人)の破産はいつ貸倒損失が計上されるのか?

※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガから引続き、
取引先の「破産」にかかる貸倒損失を取り上げますが、
今回はその【計上時期】について解説します。

前回取り上げた税務調査の実例においても調査官が
否認根拠として挙げたのが下記の公開裁決事例です。
非常に重要ですので、引用が長くなりますが、
その判断内容を精査したいと思います。

「請求人が有する売掛債権は、その債権が消滅した
事業年度の貸倒損失となるとした事例」

(平成20年6月26日裁決)

「法人の破産手続においては、配当されなかった部分の
破産債権を法的に消滅させる免責手続はなく、裁判所が
破産法人の財産がないことを公証の上、出すところの
廃止決定又は終結決定があり、当該法人の登記が
閉鎖されることとされており、この決定がなされた時点で
当該破産法人は消滅することからすると、この時点において、
当然、破産法人に分配可能な財産はないのであり、
当該決定等により法人が破産法人に対して有する金銭債権も
その全額が滅失したとするのが相当であると解され、
この時点が破産債権者にとって貸倒れの時点と考えられる。」

「法人の破産手続においては、自然人の破産手続とは異なり、
配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる
免責手続はないが、裁判所が破産法人の財産がないことを
公証の上、出すところの廃止決定又は終結決定がなされた
時点で当該破産法人は消滅することとなり、当該破産法人が
消滅することにより、法人が破産法人に対して有する
金銭債権も滅失することとなる。したがって、
F社の破産手続終結の決定がされた時点において
貸倒損失が発生したとするのが相当である。」

つまり、ここでの結論は、

法人の破産手続終結決定(または廃止決定)
=法人格が消滅する(外形的には閉鎖登記)
=法人の金銭債権・債務も付随的に消滅する

という論理から、取引先の破産にともなう貸倒損失は
【破産手続終結決定(または廃止決定)の日】
(の属する事業年度)に計上されることになります。

なお、上記のように破産によって債務者(法人)が
消滅することで債務も消滅するという考え方は
最高裁平成15年3月14日などでも採用されている
一般的な考え方になります。

また、取引先の破産を後になって知った場合ですが、
(5年以内であれば)更正の請求が可能です。
上記の公開裁決事例でも、こう判断されています。

「法人が所有する金銭債権が貸倒れとなったか否かは、
第一次的には、その金銭債権全体が滅失したか否か
によって判定され、その債権が滅失している場合には、
法人がこれを貸倒れとして損金経理しているか否か
にかかわらず、税務上はその債権が滅失した
時点において損金の額に算入することとなる。」

細かい論点について下記の記事(過去メルマガ)を
参照してください。

「貸倒損失:後になって破産手続終結を知った場合」

さて、上記の公開裁決事例では、国税は
破産=通達9-6-2の適用だと主張しましたが、
不服審判所はその論拠を採用していません
(課税判断は国税の主張が通っていますが、
その考え方のプロセスは相違しています)。

来週水曜の本メルマガでは、この論点について
掘り下げて解説しましょう。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。