2024.07.26

無予告調査で調査官に何を・どう追求できるのか?

※2023年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガから引続き、「無予告調査」について
解説します。前回は無予告調査の要件を解説しましたが、
結局のところ、国税側に無予告調査の理由開示義務がない
ことから、その実施要件を満たしていないことについて
国税側を追求することは難しいというのが結論でした。

まず、無予告調査の理由は開示されない(義務がない)
からといって、「理由を調査官に問いただすのは意味がない」
と考えてしまうのは違う、ということです。この点については
下記の記事(過去メルマガ)をご覧ください。

※引用および通達番号等が相違することは留意してください
(あくまでも配信当時のメルマガ文面です)

「無予告調査の理由は開示されてなくても・・・」

また、無予告調査の理由が開示されないことと、
適正な手続きで無予告調査が実施されたか、という点は
切り離して捉える必要があります。

無予告調査において調査官が誤った調査手続きをする
パターンは大きく2つあるのですが、まず調査手続きの
細目を定めた事務運営指針を挙げます。

「調査手続の実施に当たっての基本的な
考え方等について(事務運営指針)」

第2章 2 (3)事前通知を行わない場合の手続
(注)2 事前通知を行うことなく実地の調査を実施する
場合であっても、調査の対象となる納税義務者に対し、
臨場後速やかに、「調査を行う旨」、「調査の目的」、
「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」、
「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」、「調査対象者の
氏名又は名称及び住所又は居所」、「調査担当者の氏名及び
所属官署」を通知するとともに、それらの事項(調査の目的、
調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等)以外の事項
についても、調査の途中で非違が疑われることとなった場合には、
質問検査等の対象となる旨を説明し、納税義務者の理解と
協力を得て調査を開始することに留意する。
なお、税務代理人がある場合は、当該税務代理人に対しても、
臨場後速やかにこれらの事項を通知することに留意する。

以上の規定から、無予告調査の手続きとしては、
下記の2点が履行されたかどうかを確認する必要があります。

●無予告調査の臨場後に顧問税理士に連絡されたか?

国税局・資料調査課による無予告調査であれば
これを怠るケースは無いと思いますが、税務署による
無予告調査であれば、税理士に連絡がなされない
調査事案もあるので注意が必要です。

「税務調査手続等に関するFAQ」
(職員用 共通 令和4年6月 国税庁課税総括課)
問2-11 事前通知を行うことなく調査を実施する場合、
臨場後に、税務代理人にも連絡する必要はあるのか。
(答)
法令上、事前通知を行うことなく調査を実施する場合に、
臨場後、税務代理人へ連絡することは特段規定されていませんが、
納税義務者が税務代理人の立会いを求める場合には、運用上、
当該税務代理人に対しても、臨場後速やかに納税義務者へ
通知した事項を通知します。(以下、略)

●無予告調査であっても調査項目の通知を受けたか?

この点については下記の記事(過去メルマガ)をご覧ください。

「無予告調査で事前通知を受けたのか?」

この2点が履行されていなかった場合は、
無予告調査の調査手続きに関して抗議が可能です。

最後になりますが、無予告調査の実施に関しては
いわゆる「結果責任」を問うという考え方もあります。
無予告調査なのに納税者も調査に協力的で、かつ
是認で調査が終わったようなケースです。

この点、国税の内規には下記の質疑応答もあり、
無予告調査で結果責任を問うのは難しいでしょう。

「税務調査手続等に関するFAQ」
(職員用 共通 令和4年6月 国税庁課税総括課)
問2-10 事前通知を行うことなく調査を実施した結果、
特に非違事項が認められなかった場合、手続違反となるのか。
(答)
通則法第74条の10の規定は、事前通知を行うことなく
調査を実施した結果として必ず非違が発見されることを
要件としているものではありませんので、事前通知の要否について
必要な判断を適切に実施している限りにおいては、調査の結果
として非違事項が認められなかった場合であっても、訴訟において、
手続違反と判断されることにはならないものと考えられます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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