2023.12.01

相続放棄で注意すべき税務論点4

※2022年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「相続放棄で注意すべき税務論点4」です。
相続放棄に関する論点は今回で最終回となります。

前回は、相続放棄論点でも
「配偶者の税額軽減特例」を取り上げました。

今回は・・・
相続放棄した場合における
「相続税額の2割加算の取扱い」を取り上げます。

まず、相続税額の2割加算の概要は以下のとおりです。

原則(相法18(1)):
一親等血族及び配偶者以外は
2割加算の適用対象となる。

例外1(相法18(1)かっこ書):
・親よりも子が先に亡くなるケース
・相続欠格などにより相続権を失うケース
これらの場合における代襲相続人は
本来、1親等血族ではないが2割加算の適用対象外

例外2(相法18(2)):
養子縁組した孫は1親等血族であるが
2割加算の適用対象となる。
ただし、代襲相続となった場合には
2割加算の適用対象外となる。


(相続税額の加算)
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が
当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族
(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、
又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)
及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、
前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額に
その百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。
2 前項の一親等の血族には、同項の被相続人の直系卑属が
当該被相続人の養子となつている場合を含まないものとする。
ただし、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、
又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつている場合は、
この限りでない。

ここで、
1親等血族や配偶者が相続放棄したが
死亡保険金を受け取り
相続税の納税義務があると仮定します。

相続放棄すると初めから相続人ではなくなる
ことはこれまで説明してきました(民法939)。

このケースで、死亡保険金を受け取った
一親等血族及び配偶者は相続人ではなくなることから
相続税額の2割加算の適用を受けてしまうのでしょうか。

答えは・・・
2割加算が適用されることはありません。

なぜならば、相続税法第18条第1項では
「一親等血族及び配偶者」以外に
原則として適用すると規定しており、
「相続人」以外に適用するとは規定しないためです。

つまり、相続放棄をした場合でも
「一親等血族及び配偶者」であることには
変わりがないため、2割加算の適用を受けないことになります。

これは、前回取り上げた
「配偶者の税額軽減特例」と同様の理由になりますので
前回のメルマガも併せてご確認ください。

これに関する留意通達として、
以下も併せてご確認ください(相基通18-1)。

(遺贈により財産を取得した一親等の血族)
18-1 相続の放棄をした者又は欠格若しくは廃除の事由により
相続権を失つた者が遺贈により財産を取得した場合において、
その者が当該遺贈に係る被相続人の一親等の血族
(法第18条第1項に規定する一親等の血族に限る。)であるときは、
その者については、法第18条の相続税額の加算の規定の適用
がないのであるから留意する。(昭42直審(資)5、平15課資2-1改正)

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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