2023.12.08

税務調査で簿外経費が損金・必要経費と認められない要件

※2022年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

年末に近くになってきましたので、税務調査関連において
来年以降に影響する税制改正の内容を解説します。

昨年(令和3年)12月の税制改正大綱で盛り込まれた
「(3)記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応」
の内容・詳細と、その適用時期です。

内容をまとめると【仮装隠蔽で申告または無申告の場合、
税務調査で追加的な(簿外)経費を主張しても認められない】
という新しい規定です。

税務調査の現場において、納税者が簿外経費の存在を
事後的に主張した場合であっても、国税はその精査や
反面調査に膨大な時間・労力を要した上で、経費として
認容するかどうかを確認しなければなりませんでした。

この追加的・事後的な経費を、下記の要件を
満たした場合に損金・必要経費として認めない
という税制改正が施行されるわけです
(法人税法第55条第3項・所得税法第45条第3項)。

=適用要件=

●仮装・隠蔽の申告または無申告であること

●簿外経費であること

●経費の支出を書類等で証明できないこと

ここでまず重要な論点は、無申告はともかく、
税務調査で重加算税の要件を満たしていない限り、
簿外経費であっても経費として認められる、
という措置は何ら変わらないということです。

また、仮装・隠蔽または無申告であっても、
全ての簿外経費が認められないというわけではなく、

・帳簿書類等によって経費として明らかに認められる

・取引の相手方が明らかであり、反面調査等によって
その経費が生じたと国税が認める

場合については、この規定の適用はありません
(つまり、追加的な経費は認められます)。

総じて趣旨・内容を解釈すると、本来は
税務調査において立証責任は国税側にあることが
原則となるわけですが、

「立証責任が税務署側にある法的根拠」

一方で、仮装・隠蔽または無申告など悪質な
納税者の簿外経費については、立証責任を
納税者に転換する、ということになります。

なお、本改正内容の適用時期は、

●法人:令和5年1月1日以後に開始する事業年度

●個人:令和5年分以後の所得税

となっていますので、最も早い適用時期として
来年(令和5年)春以降の法人調査となります。

今年の税制改正大綱が発表され、新たな
改正内容ばかりに目が行きがちになりますが、
来年から税務調査への影響もありますので、
ぜひ注意して調査立会いをしてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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