2024.02.02

申告漏れは重加算税?仮装・隠蔽行為の分岐点

※2023年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜のメルマガまで全3回にわたって、
税務署からの電話連絡を契機として修正申告を
提出した場合の加算税の有無を解説しました。

今回のメルマガでは、税務調査における最大の
論点といえる【重加算税】の賦課要件について、
最新の公開裁決事例を取り上げて解説します。

まず、生命保険の一時金等の申告漏れが
重加算税になるか争われた公開裁決事例です。

「請求人が生命保険金を含めずに所得税等の確定申告を
したことについて、当初から過少に申告することを意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと
認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を
取り消した事例」(令和4年4月15日裁決)

本裁決事例の前提事実は下記です。

・生命保険の一時金を受け取る際に営業担当者から
一時所得で確定申告が必要となる旨の説明を受けた

・各保険会社から送付された各書面をすべて廃棄した

・所得税の確定申告においては親族に依頼している
(親族に通帳を提示しなかった)

・確定申告の所得に遺族年金を含めるなど、確定申告の
経験や税務の知識が豊富にあったとはいえない

詳細な事実認定および判断に至った経緯などは
裁決文を読んでいただくとして、結論としては
生命保険の一時金をあえて除くという
【外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは
認められない】として重加算税が取り消されました。

同じ判断基準ですが次は、相続税申告において
税理士の関与があった公開裁決事例です。

「請求人が相続財産の一部の株式を申告していなかった
ことについて、隠蔽の行為そのものであるとか、当初から
過少に申告することを意図し、その意図を外部からも
うかがい得る特段の行動をしたと認めることはできない
として、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例」
(令和4年6月24日裁決)

本裁決事例の前提事実は下記です。

・株式の一部が申告漏れ

・相続人は株式に関して記載したノートを
関与税理士に提出しなかった

・相続人は証券会社から残高証明書等を取得して
関与税理士に提出していた

本裁決事例では、相続人が関与税理士に対して
ノートを提出していなかったことが税務調査で
隠ぺい行為と認定されたわけですが、これは
証券会社の残高証明書の内容がすべて申告財産として
適正に申告されていたと思い込んでいたものであり、
また、税務調査ではこのノートを調査官に
提示していることから、国税不服審判所は

「当初から過少申告をすることを意図した上で、
過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の
行動に該当するものと認めるに足る事情はないから、
「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はない
といわざるを得ない。」

と判断しました(重加算税の取消し)。

上記の両事案ともに、納税者の「税法の不知」
「勘違い」といえるわけですが、税務調査では
書類の破棄・(関与税理士への)不提示などが
隠ぺい行為と認定されたわけです。

一方で審判所は、納税者が申告内容の一部を
積極的に除外したわけではない=ただのミスによる
申告漏れであると判断しているわけです。

税務調査においては、上記のような申告漏れが
重加算税と指摘されやすいわけですが、
納税者が「外部からもうかがい得る特段の行動を
したとは認められない」と主張することが重要です。

次回は、理解が混同されやすい重加算税と
偽りその他不正の行為(7年遡及)の違いについて
整理して解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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