自社株贈与時における借地権計上の可否
※2025年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回は、
「自社株贈与時における借地権計上の可否」
を解説します。
以前にご紹介した
「取引相場のない株式評価に関する検討7 ~純資産株価~」
につき、
贈与税申告時の株価評価に関するご質問をいただきましたので
解説したいと思います。
例:
土地所有者:個人(社長)
建物所有者:法人
借地権の設定:平成15年
無償返還届出:提出済
評価対象地の借地権割合:60%
通常の地代:240万円
相当の地代:600万円
実際の地代:240万円
土地の自用地価額:1億円(※)
借地権設定時から不変
権利金の授受:無
被相続人:社長
株式所有者:社長100%
(1)借地権設定時
土地の賃貸借契約があるため、借地権の設定等として
無償返還届出書の提出済み。
結果、権利金の認定課税は回避されます
(法基通13ー1ー7(権利金の認定見合せ))。
また、同通達では、使用貸借であっても賃貸借と同様、
無償返還届出が提出されていれば、
権利金の認定課税が回避されることが明示されています。
(2)被相続人の相続発生時
無償返還届出書が提出されているので、
借地権評価額は零(ゼロ)となります。
個別通達:相当の地代を支払っている場合等の
借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm
5 「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の借地権の価額
また、貸宅地の評価額は以下のとおりです。
8 「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の貸宅地の評価
自用地としての価額 ー 0.8 =8,000万円
土地について賃貸借契約を締結していますので
相続税実務としては、当該貸宅地につき、
小規模宅地等の特例適用
(特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等)
を続いて検討することになります。
さらに、純資産株価に借地権2,000万円を
計上するケースがあります。
根拠は同通達8によります。
―――
・・・。
なお、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し
土地を貸し付けている場合には、43年直資3ー22通達の
適用があることに留意する。この場合において、
同通達中「相当の地代を収受している」とあるのは
「「土地の無償返還に関する届出書」の提出されている」
と読み替えるものとする。
―――
「被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し
土地を貸し付けている場合においては、」となっていることが
借地権20%計上するための前提条件になります。
これを本ケースに当てはめると以下のとおりです。
被相続人(社長)が
同族関係者となっている同族会社に対し
土地を貸し付けて「いる」ため
借地権20%を純資産価額に計上することになります。
ここからが、本日の本題です。
仮に、上記社長(父)相続時の
遺産分割での内容が以下であったとします。
妻(配偶者)が以下を相続
「自社株100%」
「法人建物の敷地」
また、妻が相続した自社株を後継者である長男に贈与し
長男が相続時精算課税を選択したとします。
その際の自社株評価では、相続時と同様、
借地権20%を純資産株価に計上しなければならないのでしょうか。
この疑問は、以下通達が相続について定めているものであり
贈与については、適用されないのではないかというものです。
―――
個別通達:相当の地代を支払っている場合等の
借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/850605/01.htm
8 「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の貸宅地の評価
―――
上記疑問については、
贈与時であっても同通達が適用されるものと解されています。
以下、公表裁決は「相当の地代方式」を前提にした
相当地代通達6の注書の適用が争われ、納税者敗訴、
つまり、純資産株価への借地権20%の計上が
求められることになりました。
国税不服審判所 平成27年3月25日公表裁決
https://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0703000000.html#a90
無償返還届出方式の場合を定めた「同通達8」も
同様の趣旨と考えられますので、
贈与時であっても相続の場合と同様、
純資産株価への借地権20%の計上が必要になると考えられます。
また、仮に、上記社長(父)相続時の
遺産分割での内容が以下であったとします。
妻(配偶者)が「自社株100%」を相続
後継者である長男が「法人建物の敷地」を相続し
その後、
妻が相続した自社株を後継者である長男に贈与し
長男が相続時精算課税を選択したとします。
この場合には、
株式所有者(妻)≠法人建物の敷地の所有者(長男)
であるため、
贈与時であっても相続の場合と同様、
純資産株価への借地権20%の計上が不要になると考えられます。
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